平沼:すごく大変ですよね。まだまだお若いんですけども、僕らなら、こういう風な建築家になってみたいなというような、目標値や憧れが、ピタッと持てるような人がいるんですけども。そういう方がおられなくて、今の段階で、ご自身の建築家としての位置付けを、歴史的な位置付けをするならば、どんなところでしょうか?
永山:え?!歴史的な位置付け…。女性が子どもを産んで建築をするって結構大変だっていう話で。もちろん大変なんですけど、今やっぱりツールが増えていて、昔の世代の方々、私がもしその時に生まれていたら、そりゃあできなかったと思います、両方は。でも今は、いろんな便利なものがあって。だから出産直前までiPhoneで図面とかチェックみたいな。片手でメッセージを送って、指示とか送れるじゃないですか。ビデオとかも、綺麗な状態で、ちゃんと臨場感もって感じられるような映像が普通の携帯で撮られるような時代にあって、ある意味では、そこに行かなくても、ある程度の情報を得られるようになっている。今、私も現場にそんなにしょっちゅう行けないんですね。家庭もあるので。それでもスタッフからその場で動画とか送られてきて、これどうしますかとか。そこにいるようにきちんと対応できるし。ツールが増えたっていうことが、一番大きいかな。あと、夜中に来てくれるクリーニング屋さんとか、宅配サービスとかを駆使しながらやっています。
平沼:現代は周りも変わってきているし。
永山:そうですね。便利なものは、あらゆるものを使って、自分の仕事する時間を確保するっていう。昔の女性建築家の方は大変だったと思います。でも、これからの方々は、もっと便利になるから、できるんじゃないですかね?
平沼:なるほどね。いつも、始まる前に控室があって、登壇される前にご挨拶に来られる方がおられるんですけど。やっぱり永山さんにご挨拶したいっていう人達がたくさん今日来られていて、その理由ってなんだろうなぁって横目で見てたら、今までのやり方でやっている建築家と、ちょっとなんか、手法が変わってきた、新しい時代をみんなが期待をしている感じがあって。来るのはおじちゃん連中ですけれども。そういうのかなって思ってちょっと見てました。ご自身では、周りの環境が変わってきたことでやれているし、自分自身はあまり意識していないっていうことなんですね。
永山:そうですね。あまり意識していないんですけど、よく聞かれるんですよ。どうやってやるんですか?とか。女子学生に、私もそういう風にやりたいんです、とか。自分がもし、働いていく良い例になれば良いなとは思いますけれど。実は私、独立した最初のメンバーは全員女性だったんです。それで、最近気づいたら、全員子どもを産みながら仕事をしている。でも、そういう時代なんだなあと思います。どっちかを選ぶんじゃなくて、両方を選びながら無駄なものを削る。
平沼:なるほどね。女性の就職のジャーナル誌みたいなもので、インタビューを受けたことがあって。建築家って一般業種から見ると、それが両立できる可能性が高いし、また女性でも世界的に活躍されている方たちがいて。それで、永山さんの話をその方が言われていた時に、ああ、もう僕ら男性が中心の仕事じゃなくなってくるんだろうなっていうのも、ちょっと思っていました。今、学生たちにワークショップをやろうって言うと、半数以上が女子になってきています。そういう時代かなという風に感じています。
芦澤:男子は、使われる時代じゃないですか?昔の縄文時代みたく。すごく極端なことを言うと。
平沼:だから、永山さんみたいな方は、星なんですよね。みんなの一つの指標になっていて、照らしてほしいんですよね。そんな永山さんにね、最後聞きたいのは、建築家ってどんな職業ですか?っていう。月並みにみんなに聞いているんですけれども。
永山:そうですね。私はさっきお話したように、結構大学出てすぐ現場に入ったというか、働き始めて、ほとんどのことを建築を通して学んだところがあるので、私にとっては学校みたいな感じ。社会を知ったのも建築を通してですし。今は割と、対会社の仕事が多いんですけれども、その都度その都度、そのいろんな分野の人、特にトップの人というか、頑張って会社を興してやっている方とかと会うことが多いので、そういう方から教えられることがすごく多くて。なので、私にとっては学校ですね。
芦澤:それを踏まえて、もう一つだけちょっと聞きたいんですけど、将来に渡ってのビジョンというか、もうちょっと言うと野望みたいなものって何かあるんですかね?
永山:まずは、当面は続けるみたいな。
芦澤:すみません。ふふふ。野望とか聞くっていうのは、もう男のアホな男しかいないんで。
永山:とにかく続けていきたいっていう想いですね。今、続けていられるのも本当、周りの協力を得てなので、はい。
芦澤:なるほどなるほど。堅実なお答えありがとうございます。はははは。
平沼:時間がいっぱいになりました。今日はどうもありがとうございました。
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