永山:これは、勝田台の家です。私、結構住宅が少なくて、先ほどの西麻布の家で実は3軒目で、これが2軒目の住宅になります。ただ住宅といっても、下が店舗になって上が住宅になっているっていう形で、専用住宅ではないんです。もともとここにケーキ屋さんがあって、その上にパティシエの一家が住んでいたんですね。代替わりする時に、息子さんが新しくお店を変えたいと言う事で、相談に来られたんです。一度敷地に行った時に、下に喫茶のコーナーがあったので、そこに座って打ち合わせをしていたら、上から子供の足音がドタドタドターって聞こえてきたんですね。それで、昔から、下で商売を営んで、上に住む構成ってあったと思うんですけれども、ちょっとプライベートとパブリックが近すぎるなと思ったんです。上の階に行った時に、まっすぐ後ろの階段をパーっと登るともう住宅で、すごくプライベートとパブリックが近すぎて、ちょっと一息入れることもなく、プライベートに帰っていくんだみたいな、そういう体験にも、ちょっと違和感を感じましたし、南側なんですけど、ここに前は窓があったんですね。住宅の窓がこの上にあって。やっぱりお客さんに見られちゃうので、いつもカーテンが閉まっているという状態。そういう、ちょっと行った時に感じた違和感を、どうにか解決するようにしていくということを考えて、プライベートとパブリックの間に空気層を設けました。下のお店って一番前が普通の塀ぐらいの高さなんですね、1,800の。ちょっと塀を入ると、そのまま塀が空間を覆って場所になっていると。そこの上に庇のように自分の家が突き出している。室内から見ると、外みたいなところを入って行くと、すごくオープンな場所があります。ケーキって直射光がすごく大敵なんですね。生クリームとか溶けちゃうので。そういうのをきちんと自分の家が守ってくれる。ほとんどの季節は、全部シャットアウトして直射光がケーキの段まで当たらないんですけど、冬だけちょっと当たる時があって、その時はこの手前のガラスだけオーニングをかけている状態でした。前の通りが比較的車通りが多いので、建て替えた後、何だろう?って言って入ってくる人がすごく増えたみたいです。上の自分の家に行く時にちょっとだけ周りの都市の風景が見えてきて、ちょっと一息入れられると。これが全体の構成なんですけど、これがさっき言った低い塀の様な感じで、お店に入っていくと段々と高さが上がって、奥に厨房があって、2階から住宅になっています。2階に浴室と主寝室、3階にリビングダイニングと子供部屋。いつも窓が閉まっていた道路側は窓を設けず、光溜まりを作るようなテラスを設けています。南側に立った壁に上から光が当たり、直射日光はほとんど入らず1年中安定した光が入ります。家に帰ってきた時に最初に見えるシーンで、廊下から隣の家に抜けたような廊下になっていて、浴室、主寝室、ちょうど真裏が隣のマンションの駐車場だったので、結構抜けている空間でした。直射が入らないので、ほとんどカーテンもすることなく、年中割とすごく明るい感じの部屋になっています。これがちょうど、後ろの駐車場の抜けで、お父さんとかが帰ってきた時にちょっと階段の下から見えるようになっています。夜の風景は、お店の上に開いたテラスの穴から光が漏れてるんですけど、子ども達が覗くと、お父さんが仕事しているのを上から眺められるようにしています。

平沼:はい、ありがとうございます。

芦澤:2つずつですね、ちょうど。

永山:そうですね。なんかそういうふうに切れているみたいで。

芦澤:いや、面白かったです。

永山:ありがとうございます。

芦澤:面白かったのと、最初の方は、永山さんがおっしゃるように、構成が明解というか、割と強い方向性を持っているんですが、でもやられていることは、建物を通して都市空間の方に光が入って来るという、パブリック精神旺盛だなと思って。2つ目のもその店舗付き住居が持つ問題を、少しバッファーをとることで明解に解いていて感心しました。

永山:ふふふふ。ありがとうございます。

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