永山:そうですね。でも、それ凄く本質的だなって思ったんです。最終的に別に意味を表す為に建築を作っている訳ではないので、途中までエンジンとしての意味はあったとしても、それは途中で消えてもいいのかなという風に思います。展示室の写真ですがこんな感じで横尾さんの絵が半分、色が消えている。そうやって行くうちに横尾さんが「僕の赤い絵のシリーズ、手前に置こうよ!」みたいな。赤のフィルタかかってないのに赤みたいな。一緒に建築の空間を見ながら、入れる作品を決めていきました。赤いフィルタを通した向こう側は色がなくなるんですけども、表面に映る像は反射なのでカラフルに見えます。こういう不思議な現象があったりとか。元々赤い石のインスタレーションが来るのが分かっていたので、これを消そうと思ったんですね。入った時に赤いフィルタ越しにはわからないんですが、フィルタを外すといきなりこのカラフルな庭が現れ、おや?って、みんなあっ!って驚くんですけど。ます。面白かったのは、赤いフィルタは色彩を消すだけだと思っていたんですけど、明度も変えるんですね。ちょっとマニアックな話をすると、赤を赤で消すと、赤が一番白くなるんです。明度も変化しているっていうのが、赤の波長の特徴なんです。あとは、母屋は一部、全部黒いガラスにして。外から見ると鏡のように反射します。香川県って、すごく日射が強くて、ほとんど外って眩しくて見られないような状態なんですけど、中から黒ガラスを透かすと、サングラスから眺めたような感じで、凄くクリアーに外が見える。あとは中に入っている、日の量をかなり制限して、ほとんど見ると真っ黒なんですけど、日が入ると透けて見えるんですね。でも実際の場所より、影は凄く薄くなっているので、夜になると反射ができて、横尾さんのコラージュの世界みたい。夜もすごく見せたかったので、効果を作ったり、水中の照明を結構工夫したりして。最初、開館の時は夜やっていなかったんですけど、今は何曜日だけという感じで、夜もやっています。で、これが、外側から見た所で、順路としてちょっと「の」の字型に一筆書きの順路なんですけど、歩いて行って、最後に塔の所です。これがあの9,000枚の滝のポストカードが貼られている、そういうインスタレーションです。元々これは展覧会に、その時の期間だけでやっているインスタレーションだったんですけど、ここは恒久的に置きたいと。滝なんで井戸みたいなものをイメージして塔みたいなものを作ろうという事で、煙突みたいな形にして、上下鏡で永遠に映り込んで行くというような場所になっています。これが最後の展示室で、南側からの光でほとんど真っ赤に染まるんですけど、すごく特殊な舞台用の照明で、強い光で赤をキャンセルするように、絵だけがカラーで浮かび上がるようにしています。ここの部屋の光がすごく難しくて。実験で大体できるの分かっていたんですけど、ぼんやり絵の外縁が赤に染まっちゃうんですね、マスキングしても。横尾さんに怒られるかなと思って、で、オープニングの記者会見2時間前に初めてここにやってきたんですよ。どうしようと思って、部屋に来てすごく喜んでいて、「息まで赤く染まるね」とか言って、このことにあまり問題視されなかったんで、あぁ良かったって思ったのを覚えています。これが反対側の赤ガラスの表面にさっきの絵が写り込んでいると。これがリノベーション前の元々の状態です。柱1本蹴ったら崩れそうみたいな。この時、ちょうど一人目の臨月の時で、敷地に行けなかったんです。船や飛行機にも乗れないようなタイミングだったので、全部スタッフにビデオ撮って来てもらって、このボロ屋じゃないですか。ありえない!とかいって、使えないかも!とか言って、凄く焦ったのを覚えています。唯一敷地に行かずに設計しました。

平沼:妹島さんに教えてもらった安岐タクシーさんていうのが豊島にいるじゃないですか。

永山:あぁ!アキさん?

平沼:豊島美術館に行って、安岐さんに最近できましたかね?って言ったら、一個できましたよって言って、連れて来られたんですよ。

永山:アキさんは凄く本当に良い人で、フェリー乗り場に、甘夏とかの皮剥いて、持って来てくれるんですよ。食べな!みたいな。私が妊娠していたので、結構気を使ってくれて。

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