平沼:ありがとうございます。芦澤さん最後どうですか。

芦澤:はい、あの、今現代の社会ってかなり複雑になっていて、問題もいろいろあって。建築家が働けるシーンは、先程坂さんがおっしゃったように、モニュメントを作る役割から、逆に消費社会に対して使われてしまう、そういう建築家像もある中で、坂さんが若い建築家たちに、建築家とはこうあるべきだと、言うようなことをおっしゃっていただけるとしたら、どのようなビジョンでしょうか?

坂 :あの、これもさっきちょっと言ったことなのですが、やっぱり、二川幸夫さんも言ったようにね、僕もほんと少し思うんですけど、いい建築を作るのに一番重要な訓練は、大学の勉強でもなくて、良い建築を見ることなんですよ。料理の世界で言えば簡単で、美味しいもの食べたことがない人は、美味しいもの作れないんですよね。だから、もちろん日本にもいい建築がたくさんありますが、やっぱりもっと海外に出て、いい建築を常に見るということをどんどんやることが、若い学生、建築家にとって一番重要なことで、それはずっと年とっても繰り返していかなくてはいけない。また同じところに何年かして行ったら、全然違う感情がありますしね。

平沼:はい。

坂 :とにかくいいものを見ることが一番重要ですし、それから先程も言いましたけども、もうほんとに日本は飽和状態、リミットにきています。例えば韓国、もし北朝鮮と一緒になったらものすごいキャパシティやポテンシャルがありますし、中国もポテンシャルだらけだし、ヨーロッパもまだ東に伸びる余地があるしね。そういう余力の部分、ポテンシャルが余ってるところが他の国にはあるのですが、日本はないんですよ。だから日本人もどんどん海外に出て、海外の人をどんどん日本に受け入れる。やっぱり世界中を我々が幸せにするんだという考えがなかったら、我々はもう幸せになれないと思うんです。限界があるから、やっぱりどんどん外に出て行くことじゃないかなと思います。

平沼:毎回ゲストの方に最後にお聞きしている質問なのです。坂さんが感じている建築家って、どういう職業ですか?

坂 :一言で話すのは、難しい質問ですね。でもやっぱり、人に喜びを与える職業なんじゃないのかな。僕はお医者さんみたいにいつも人を救える仕事ってすばらしいなって憧れるんです。でも当然、お医者さんとか弁護士さんってとても大変で、人に辛い報告もしなくてはいけないじゃないですか。そう言う意味で、建築家ほど運のいいような仕事はないですよ。常に人と、人の喜びを、共有体験することができる仕事なのです。仮設住宅なんかを作っていたら、本当にね。仮設住宅に引っ越した人が喜んでくれたら、もう億万長者の家を作ることと変わらないぐらい嬉しいですよ。だからその喜びは、経済の問題と全然関係ないですし。ですよね?

平沼:はい。

坂 :だから、本当に人に喜びを与えられるいい仕事だと思います。

平沼:坂さん、時間がいっぱいになってしまいました。今日は本当にありがとうございます。

坂 :いや、こちらこそありがとうございます。

芦澤:ありがとうございました。

AAF:皆様ありがとうございました。
今日は、坂先生もこのあとレセプションにご参加してくださいます。30分程度の少しの時間となりそうですが、皆さんもどうぞご参加ください。本日はご来場いただき、誠にありがとうございました。

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