平沼:…もう大丈夫ですか?

芦澤:あの、今のお話にちょっと絡んでお聞かせいただきたいのですが、だいたい難民の災害支援のお仕事というのは、坂さんが頼まれてやられているのではなくて、ご自身からこう、提案という形で…?

坂 :あの、両方ありまして、国連の仕事は、コンサルタントとして雇ってもらったので、ちゃんと、若干ですけど費用をいただきました。それと、例えば東北なんかは、完全ボランティアで、頼まれもしないのに行って、お金集めや企画から全部自分でやっています。それに対して例えばトルコやインドはで、向こうの方がたまたま雑誌で僕の被災地支援の記事を読んで、連絡してくださったんですね。ですから、お声がかかる場合と、自分から行く場合の、まぁ両方あります。ただお声がかかるのを待っていたら、なにも起こらないので。

芦澤:そうですよね。

坂 :そういう依頼が無ければ、自分で行きます。

芦澤:はい。

平沼:…いいですか?締めますけど…。はい行きますか。はい。はい。せっかくなので…

会場4:スタッフはどのように集めているのですか?

坂 :ボランティアをやる場合は、スタッフに給料を払えないので、大体は学生とか。それから、四川の場合は日本から学生を連れて行きましたが、ハイチなどにはなかなか連れていけないので、まずは、災害地にある、あるいは周辺にある建築の大学に連絡をします。最近僕の活動が世界的に知られてきたので、大体連絡すると、あ、是非やりましょうって、どこでも応じてくれるんですよ。なので、なるべくその被災地に近い建築の大学の先生と学生でチームを組んでやります。全部タダでやってもらいます。

会場4:スタッフや一緒にやっている人達との、プロジェクトのデベロップのプロセスに興味があります。坂さんが割と全部思いついてやる感じなのか、スタッフからもこうどんどん…

坂 :それはボランティアのプロジェクトも普通のプロジェクトも関係無くの話ですよね?まぁ実際はどんなものでも同じなのですが、ディテールから全部自分で考えます。もちろんスタッフもいろいろ提案をしてくれるのですが、今のところはまだ僕のほうが良いアイデア持っているので。だいたい僕はスケッチをいっぱい描くのですが、ディテールから全部自分で描きます。
あとね、今もう皆コンピューターを使っているし、本当に重要なツールではあるんですけどね。やっぱりスケッチを描かないと。被災地とかに行くと、図面を出して、現場の職人さんと筆談になることがすごい多いんでね。

平沼:なるほど。

坂 :やっぱりすぐに人に伝えられるようなスケッチを描けないと、通用しないですね。だからちゃんとコンピューターの技術も学ばなくてはいけないけれども、やっぱり手で描く能力、技能を持たないと。今もモスクワで建物をやっていますが、モスクワですらやっぱり現場に行ってそこで筆談になる。イタリアなんかも特にそうですね。イタリアの職人は結構それが好きなんですけどね。未だに先進国でもそういうところがありますから、やっぱり皆さん、スケッチを描く癖はちゃんとつけて欲しいと思います。

平沼:はい、どうぞ。

会場5:あの、今日のお話を伺って、仮設住宅ですとコストの問題や構造の問題、ノマディック美術館では輸送のコストの問題などがあって、それを全てデザインで解決していくと言われていたのですが、そのようなコンセプトを解決する手段として、デザインって言うには非常に美しすぎるのではないかなと思うのです。例えば、東京のノマディック美術館は行きまして、コストの問題、輸送の問題だけであの美術館をつくられたにしては、すごく感動したのですが、実は問題を解決する方法としてのデザイン以上のなにか美学的なもので、いつも考えられていることがおありでしたら、そこの点についてちょっと教えていただきたいなと思います。

坂 :あの、まさにそのコストのこと、構造のこと輸送のこと解体のことまで含めてね、そりゃ全て全部デザインのプロセス。で、まあ普通は解体のプロセスなんてはデザインのプロセスには入らないんだろうけども、僕にとってはそれがヒントになるんですよね。紙管だってもともとそんなに綺麗だと思われている材料ではないですし、コンテナだってそうですよね。でもね、モノの美しさっていうのは、材料の高級さとか、テクスチャーじゃなくて、やっぱりそのプロポーションと、それから光と影なんですよ、結局建築は。だから、それはやっぱり相当自分で吟味してやりますし、考えます。美しいものを作るためにお金をたくさん出したり、高い材料を買う必要は全然ないわけで。僕の例を見てもらえばわかるように、繰り返しが多いんですよね。繰り返し、そういうシステムを作って、あとはさっきも言ったように光と影ですね。それをどうやって入れるのか、それからいかに自然の換気をするか、まあ風を入れるか、もう建築の基本はそれだと思います。


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