平沼:このあたりで会場からの質問をいただいてもいいですか。

質問A:お話の中で美学の話をすごくされていたんですけども、いままで見た中で藤森さんが一番美しいと思われたものを教えていただけますか?

藤森:美しい中に、なんか美しいけどなんともっていうものがあるんです。たとえば金閣寺とタージマハルは、なんとも困るんです。難しんだけど、ただ美しいだけではダメで…、天国のような完全な美しさはダメなんだよね。プロジェクトではいいんですけど。そういうタージマハルとか金閣寺のような美しさでない美しさでいきますとね、オビエドというスペインの北の海岸に、アストリア王国っていって世界遺産になっていますけども、ヨーロッパでできる前の、初期のロマネスクの移築があるんですね。プレ・ロマネスクのその中にちっちゃな教会があって、それは本当に感動しましたね。それともうひとつ、ポルトガルでみた石の家、その2つですね。アストリア王国のものは9世紀のものなんです。ポルトガルの石の家は30年くらい前に作られたんですけども。国内では僕は投入堂が一番好きですね。投入堂は何度でも見れますよ。昔は落ちても死んでもいいって約束さえすれば中に入れてくれたんですよ。昔は、落ちた人がいてもしょうがないっていうことだったらしいけど、今はなぜそんな落ちる場所があるのかってね、開けてくれないんですよ。

質問A:ありがとうございました。

 

質問B:最近は歴史的な建造物が大阪でもたくさん壊されていってる状況なんです。そういうことに一般市民とか若い建築の方がですねあまり興味を示さないんですね。どうしたら一般や若い人に歴史の価値をわかっていただけるでしょうか。

藤森:われわれ市民のほうが歴史の大事さはわかるんじゃないかと思うんですけどね。大学なんかの授業であまり歴史の授業が面白くないんですよね。あれが一番の問題ではないかと。だから歴史っていうものの面白さと大事さをちゃんと教育すればだいぶ違うと思いますけどね。ただ、デザインの先生なんかに比べると歴史の先生ってなんとなくさみしい感じで生きていましてね。ともかく残念なことなんですけどもね。

質問B:歴史をどう考えてまちをつくっていくべきなのか、個々のモノをつくりながら考えたらいいのか、歴史の保存をどのように進めていったらいいのでしょうか?

藤森:僕もさんざん歴史の保存に失敗してきたからね。わからないですよね。東京でも保存をやってうまくいっているのは東京駅だけですからね。相当やって上手くいったんですけどね。30年くらい前ですかね、最初は壊すって話で、いくらなんでもあれを壊すわけにはいかないので、いろいろやって、政治家が動いてくれてなんとかなったんですけどね。ほんとに難しいことだと思います。ただ、長い目でみると歴史を大事にしなきゃいけないという方向にいっていると思うんですけどね。

質問B:どうもありがとうございました。

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