藤森:これは「お前の現代都市論はあるか?」という話があって、これは私の現代都市論でございまして、向こうに映っているのと空はブラジリアの写真です。「ベジタブルシティ」というのを考えていて。大林の既刊の雑誌の編集顧問をやっていて、あるときに未来の都市の話が出てきて、色んな事情があって印刷直前で穴開けられないから、絶対誰も考えたことのない未来の都市案を急遽つくれっていう事になったの。丹下さんの様なものじゃない誰も考えたことのない未来図をつくれって。ものすごく困ってね。でも考えたんですよ。植物と人間の関係とかずっと考えていたんですよ。それで植物の中で一番人間に近い植物は何かって考えたの。それ野菜なんですよ。野菜は人間のために改良したものだから。そうだ、野菜のイメージで都市をつくろうって思ったの。だけど具体的には分からないので、いっそ野菜でつくってしまえということで。右手の方のやつ、これはね「サツマイモ住宅」というので、サツマイモの芽が出てます。その右隣が「人参オフィス」で、バナナはね、「バナナホール」っていうホールで。んで「玉ねぎ小学校」でね、アスパラガスは「アスパラ住宅」。「アスパラ住宅」については、大林の設計部がディティールまで書いてみて。結局構造的にはできないけど、結構面白い出来で。これが私の21世紀の都市イメージ。まぁ実現しないと思いますけど、あれだったらいいんじゃないかと思っていて。
僕らの学生時代に未来都市イメージってのは出尽くしたんですよ。それは「アーキグラム」ってのが出したんですよね。それはウォーキングシティとか、それはもう衝撃的で、あれ以降の都市イメージってろくなものがないんです。僕は「アーキグラム」を越えたかったんですよ。でもどう考えても「アーキグラム」は越えられなかった。だけどあの「ベジタブルシティ」でね、越えれた。

平沼:ははは(笑)

藤森:突然ね、「アーキグラム」のピーター・クックから電話があって「会いたい」って言うんだよ。会ってみてもと思っていたら、突然家に来たんですよ。来たら追い返すわけにもいかないので話をして。ピーター・クックに聞いたら「あなたの仕事に一番興味がある」って言われたの。どこに興味があるのかわからないけど、僕としては、都市イメージとしてはずっと「アーキグラム」が頭にあったの。「ベジタブルシティ」でやっとイメージ上越えれたんですよね。ただね「アーキグラム」の都市も結局はできなかったんですよね。でも、あれの影響力は僕とか石山さんとかには強いと思いますよ。

平沼:日本の、藤森さんよりも一つ上の世代がやられていた「メタボリズム」をどう見られていましたか?

藤森:アーキグラムに比べれば、興味がなかったのですよ。

芦澤:「ベジタブルシティ」をもう少し解説していていただけますか?

藤森:解説すればするほどね、なんか問題が大きく…。皆さんが死んだ後、どういう所へ行きたいかと思ったらやっぱこういう所が良いんじゃないかな、という気はすると思うんですよね。だから、僕にとっては一種の天国のイメージですよね。僕の世代にもなると、もう20年はもちません。

芦澤:農業都市とかそういうものでもないんですよね?

藤森:全く興味がないですね。自然の環境を最も壊したのは農業ですから。近代の工業が地球に与えたダメージなんてたいしたことないですよ。今でも、ものすごい勢いでジャングルは農地のために犠牲になっていまして。森という森を全部切ったのは農業で、地球の環境を決定的に変えたのは農業です。人間と地球の関係はね、聞かれても困る。

芦澤:人と自然の関係に興味はありますか。

藤森:そうそう。人と自然の関係には興味ありますね。でも人との関係は、あんまり考えたことないですね。

芦澤:コミュニティとかコミュニケーションとかは?

藤森:私の考えることではないというか。建築家の考えるコミュニティプランは絶対信じちゃだめですよ。建築家はね、自分のやりたいことしかやってない。社会のことなんか考えたことはないので。大地震が起きると時々考えたりしますけど、1年もちません。(笑)

平沼:んははっ。(笑)

藤森:と言うと身も蓋もないですけど。でも私は20年間歴史家をやって、建築家の発言と出来たことと社会との問題を考えてきましたから、その結果、建築家のいう社会のことは、あんまり考えない方がいいと思いますけどね。

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