大東:

話が飛んでしまうのですが、龍谷大学で教えていらっしゃる廣瀬純さんという方が言ってらっしゃるんですけど、昔、人の運動競技はスプリンター的だったと。スプリンターというのは、走るとか物を投げるとか、自分の内なる力で競っていた競技のことです。あるときから、それはサーファー的になった。サーファーという、外部の力をいかに乗りこなすかという競技が出てきて、この二種類の競技が出てきたことが、一つの運動の変化ではないかと。ただ廣瀬さんも言っているのは、これからを乗り切るのはこの両方のどちらでもないんだと。これからを乗り切るのは、言ってみれば、自らが波じゃないかと。このサーファーが乗りこなしている波の一部であることを自らが認識していったときに、予測不可能な結果と結びつくということを言っています。

家成:
これは217も同じですよね。波を起こそうとお二人が企んでいる。波って、ビジョンがないんですよね。どこから起こったか、どこで終わるのか分からないうねりということですよね。
大東:
それで、これから二つくらい、この波の話をしたいと思います。
ご存知の方は少ないと思うんですけど、浜松建築会議というのをこの前、6月26日にやりました。建築のイベントは、数の多い少ないはあれども、東京でも大阪でもよくありますが、このとき浜松でなぜやりたいかと言ったら、一番初めの話に戻るのですが、これからの社会が成長主義的というか、儲かるとか右肩上がりで物が増えていくとかいう社会ではなくなっていくときに、これまでの東京を目指すような都市モデルは無効ではないかと。大阪がいくら東京を見て、どこかのメンズ館のようなものをつくっても、お客さんは入らないじゃないですか。(苦笑)
そのロールモデルというのは、もはや自分たちにはないのですよね。大阪が目指す都市モデルもない。実は、地方都市ではないかと。それは都市の縮小近郊モデルです。そのときに、僕はたまたま兵庫県生まれですが、育ったのが浜松なんです。その浜松で、出身の人間と在住の人間が集まって実行委員として組んで、これからの都市を話そうではないかということでやりました。モデレーターとして藤村龍至さんと山崎亮さんをお呼びして、建築のコアな議論と、地方で向き合う実務的なこと、それこそ部屋は何部屋欲しいとか、そういうメタな話とベタな話を結びつけるということを考えていました。浜松というのは、先ほど言ったように、中心市街地はめちゃくちゃ空洞化しています。大阪でもそうだと思うんですけど、地方都市というのは今、どこでもそうだと言えると思います。それで、ひとつシンポジウムに他に、ワークショップとして中心市街地に対してリサーチをかけたんです。それは、浜松にある静岡文化芸術大学という大学の学生と、横浜国立大学出身のメンバーが中心になっている403 architectureという彼らが中心になってリサーチしてくれました。
今、このA,B,C,D,Eとブロック分かれていますけど、乱暴に言うと、浜松の中心市街地はこのくらいなのです。リサーチするにはすごく手頃なサイズだったのですが、どのくらい空き室があるかということを調べました。これが路面空室の一階部分、これが二階部分です。これは雰囲気空室、何となく外から見たら空いているのではないか、何となく空いていそうに見えた部分です。大家さんに聞いてみたら、実は倉庫だったりしたのですが。それで総空室量というのが、この3つを足したものです。建物別に空室率を表したらこんな感じです。実感空室量というのが、全部を合わせたものです。
それに合わせて、駐車場が中心市街地にはよくあります。中心市街地にある駐車場というのは、積極的な理由で駐車場にしたというよりは、買い手が見つからないとか、寝かせておく間に固定資産税分を払うためにするというのは、よくある話だと思います。なので、駐車場も含めてリサーチの対象としました。それを全部足すと、無人エリアがこれだけあります。結果的に今回は、時間的なところと労力のこともあって、実際にどのくらい空いているかということだけのリサーチだったのですが。これから浜松建築会議は第二回、第三回と続けていくのですが、このリサーチも継続していきたいと思っています。そのときにリサーチしたいパラメーターとして、やはり不動産の軸は取り入れたいと思います。具体的に賃料と平米数の関係とかで、もしかしたら借りにくいボリュームだとかが見えてくるだろうなと。
平沼:
もうそろそろ苛めてもいいですか?(笑)
例えばこのリサーチのやり方って、僕、学生の頃はリサーチマニアとか分析オタクって言われたくらい、リサーチをやらされたことがあるんですけど。こう、普通に空き室を調べていったり、無人エリアを結果的に導くというよりも、例えば重量とか、3kgなら3kgという定数に対して、それと同じ物の重さをピックアップしていくとか、そういう普通のやり方ではないやり方を、何か手法として見つけようとはしなかった?
大東:
これはすごくオーソドックスな手法ですよね。重量といったことは、僕は頭にはなかったのですが、やはり不動産ですね。中心市街地がなぜ空洞化するのかと言えば、賃料が高いんです。昔、中心市街地が賑わっていたときのまま、大家さんは賃料を維持する。そして、よくある地方都市に、郊外にショッピングセンターができて、そこでは駐車場代も安いという原因は、リサーチする前から、ある程度予想がつくところです。なので、次に扱いたいのはやはりそういった経済の話です。
芦澤:
賃料は結構面白いかもしれないね。
大東:
結構ハードルはあると思いますが、賃料はまだいいとして、あとは所有の問題があります。例えば個人オーナーさんがビルを持っていると、空洞化は切実な問題です。早く貸したいけど、ある大規模な一定以上の規模の不動産屋さんだと、多少であれば寝かしておいて、賃料は下げたくないという要望も可能だと思います。だから、誰が持っているのかということ、所有の問題というのも、一つの扱えることかなと思います。

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