|
司会: |
それでは、再開したいと思います。 |
家成: |
そういえば、今日はちょっと面白動画みたいなものを持ってきているので、CMに入ったことですし、気分を切り替えるために見れたらなぁと思います。最近、都市というのは、多国籍企業の資本の投資、投下のために商品化していっている訳ですが、その中で、先ほど少し説明したような巷を取り戻す行為のようなものを、いくつかお見せできたらなぁと思います。
これは、ベトナムの交通風景です。こんな複雑に入り組んだところで、事故しているかもしれないし、事故していないかもしれない。僕がタイに行ったとき、目の前でバイクと車がぶつかったときに、ごめんと言ってお互い散っていく場面を何回か見て、すごい状況でした。こうしたベトナムの交通風景を見たときに、僕たちは普段、車が通ってもいないのに赤信号で待っているという状況をどういうことか考える訳です。都市において、身体能力が確実に衰えてきているのではないかと感じます。そういう中で、都市における身体能力を復活させるために、トールバイクというものがあります。僕たちは普段、ファミリーレストランに行けばメニューを2回繰り返されるような、サービスを浴びることに慣れている訳ですが、トールバイクは相当危ないですが、自らこういったかたちで自分たちの身体能力を取り戻す、これくらいの軽い感覚。どうですか、皆さん。 |
芦澤: |
どちらかというと、身体能力を拡張するということじゃない? |
家成: |
そうですね。拡張していく試みを、どんどん都市の中で実践していくとどうなるのだろう、と思います。このように皆がトールバイクに乗って淀屋橋で通勤すれば、事件になりますよね。動的というのは、こういうことです。
あるいは、パルクールというスポーツがあります。これは、僕たちが普段都市の中で歩いているときに、通常、A地点からB地点まで移動するために街の道路を歩くとき、街は色んな意味で僕たちにああしなさい、こうしなさいと言っている訳ですよね。ここでは一旦止まりなさい、ここではこういうふうに振る舞いなさい、といったかたちで、街には禁止事項が結構あるんですが、このパルクールの実践者たちは、街を全然違う使い方をします。これくらいの発想が僕らにあれば、どんどん街は面白くなっていくのではないかと。ただ、パルクールは決して真似しないで下さい。相当危ないですからね。
そういえばこないだ聞いた話があってすごく面白かったんですが、芦澤さんが音楽をされていて、一般に使われているショップを昼間からレイブパーティー会場に変えるという試みをされていたそうですね。ここでこうしなさい、と普通は思われている場所で、全然違う状況に音楽一つで変えていくような試みって、すごく面白いなぁと思います。 |
芦澤: |
そうですね。つい月曜日のことだったんだけど、大阪のミナミの友達の店に久しぶりに行って、そこにはDJブースが置いてあるんですね。僕はもともと20歳前後にDJをやり、パーティーオーガナイザーをやっていたんですけど、そこのお店はすごく狭いお店なんですが、音楽をかけると、来るお客さんが皆踊っている。それはそれで一つのイベント空間になっていて、でも無料ですよ。売上が落ちるとか言われながら・・・皆、服を買わずに踊って帰るんです。(笑)
もう一つだけ言わせてもらうと、都市ではないですが、タイとかゴアでは、暗号だけが出ると人がばーっと集まって、そこでパーティーをやるんです。今みたく、イベントをやりますよ、という商業的な広告はせずに、それを街の中で探すのが結構面白くて、あるいは人づてに聞く。例えばそれがインドのジャングルの中だったりする訳ですよ。これはホンマなんかな、と思いながら、二日くらいかけて歩いて行ったら、実際にパーティーをやっている。それはそれで、人が集まって場ができて空間ができて、というのはある種、建築的なのかな、と僕は感じています。 |
家成: |
僕も全く同感というか、人があるイベントや出来事で集まってくると、それは建築ではないかと思う訳ですよね。スリットから差し込むミニマムな光だけ追いかけていては、建築を語れないんじゃないかという気がしています。 |
芦澤: |
もともとレイブは、今は事件があったりして少しイメージが悪いことになってしまっていますが、最初ゴアでやっているときはパーティーと呼ばれていたんですけれど、そもそもはロンドンで地下鉄が終わった後にそこをハイジャックしてクラブ化するというものが発端です。そういうイベントが、今は東京でも大阪でも、都市があまり積極的な使われ方がなかなかできていないですよね。僕、再来週やろうかなと思っているんだけど。(笑) |
家成: |
どんどんそういう活動をしようとすると、周辺に追いやられてしまう訳ですよね。僕らも普段、北加賀屋でやっていますけど、都市でこういう場所ができたらな、と常に思っています。
もう一つ、これはトレインサーフィンという映像なんですが、電車を波に見立てて、サーフィンをするというやり方です。これも、公共交通機関を全然違う使い方をしているという例です。これも決して真似しないようにしてください。相当アグレッシブですよね。 |
芦澤: |
でもこれ、人が見ると、何でこれが建築なのって思う人もいるかもしれないですね。 |
家成: |
でも、街をどう使うかということがそもそも建築的であり、街が開かれていることが、建築をやっている人間にもそうでない人間にも、等しく関われる瞬間ではないかな、と思ったりする訳です。さっきのトールバイクは一人で乗っていましたが、冗談で皆が自転車に乗ればという話をしていましたが、これは実際に2,000人で自転車に乗っている例です。これは、車道を車から取り返そうという、クリティカル・マスという運動です。一人でやっていても、どうにもならないものですが、うまく関係性が保てる人たちと共同で動かせば、それがすなわち運動になっていくような例です。これは道路を占拠している訳なんですが。 |
大東: |
これは、毎週何曜日の何時にここに集合、というかたちでやっている例です。日本でもありますよね。 |
家成: |
これにはリーダーとかいないんですよね。そこがすごく面白い。 |
大東: |
車を止めるには、ちょっとコツがあったりするらしいです。 |
家成: |
ここでは、マウンテンバイクやすごく速そうな自転車からママチャリまで、色んなバイクが参加していて、中には仮装している人もいて、めちゃくちゃ面白いなぁと思います。
こういう感じで都市を使えると、すごく面白いのではないかな、と思っています。 |
芦澤: |
話を聞いていて思ったのが、今の都市はすごく消費構造にあって、消費以外のところで楽しめる機会が非常に少なくなっているので、何か自分たちがアクティビティを生みだすとか、自らがいかに楽しむのかというところを、それは建築ではないのかもしれないですが、都市で生きている以上はすべきだということを感じますね。
|
|
>>続きへ
|
|