家成:
さっきのロンドンの話なんかは、まさにすごく面白いなと思いました。インドのジャングルやゴアに行くにはちょっと遠いけど、淀屋橋の地下にくぐれば、夜はそこでパーティーをしているというのが、結構えげつない風景で面白いですよね。
大東:
法的には、市営地下鉄が持っているんだけど、使うのは別の人間でもいいというか、所用と使用が別々でもいいとか、それくらいで乗りこなせたら面白いなと思います。
芦澤:
所有権というものがもう少し曖昧になってくると、もう少し色んな楽しみ方が出てくる気がします。
家成:
今、芦澤さんからちょうどいい振りをいただきましたので、所有権を超えていく試みというのを、ちょっとここで紹介させていただきたいと思います。
「Latest no.00(レイティストナンバーゼロゼロ)」という試みを紹介します。これは、さっきCMの前に紹介させてもらった住宅のプロジェクトを、さらに22人で増改築していこうという試みです。当然、参加してくる人間は、それぞれに図面や模型、パースペクティブを持っている訳です。図面は22人でつくって、設計も同じ人数で関わる。施工はちょっと手伝いに来てくれた人もいるので、もう少し人数が増えている、というプロジェクトです。この写真の右手にあるのが「no.00」で、どんどん増改築された感じを上から撮っています。これをつくるにあたって、僕らも一応、来る人とのコミュニケーションをとっている訳ですが、勝手に皆が模型をつくっている壁に、こういうルールが貼られていました。参加者が自立的にルールを設定して、それを生成していくような仕組みがここで生まれているということです。そして、だんだん改装され、増築されていく。この辺で多分、土地を越境しています。左の方に、突然キャベツ畑ができると、隣に誰かが井戸を掘る。うまく連鎖していって、どんどん増築されていく。
大東:
ただ足されていくだけでなく、自分がつくったものを潰されてしまう、ということも引き受けようと。
芦澤:
敷地の設定はどうなっているの?
家成:
敷地はないです。
大東:
敷地と法規はなしにしました。(笑)
家成:
つまり、土地の所有性を一気に乗り越えているということです。今は最終的にはこういう状態です。
芦澤:
これホンマにつくるの?
家成:
いや、今はまだ思考実験なので、ホンマにはつくれないです。本当はつくりたいのですが。
これは今から思うと、僕たちは実際には模型作りには参加していなくて、参加したのは建築系の学生や、建築を学んでいない学生、社会人の人もいる。一つ一つを見れば、建築的ボキャブラリーは非常にオーソドックスなんですが、それが複雑に関係し合って一つのものができてくると、色んな豊かな場所が生まれてくることが、後から発見できていく訳です。
大東:
一人の天才が線をひいたところに豊かな空間があるというのは認識されていると思いますが、そうでなくても豊かな空間が実現できるというのが、僕らが実感できたことです。
家成:
こういう、割とオーソドックスなボキャブラリーや、個別の振る舞いからは想像できない関係性から全体をつくっていくということが、面白いと考えているところです。
芦澤:
それはある種の都市性みたいなところですね。それを一つの建築の中でも織り込めるだろうと。
家成:
そうです。それは、僕たちが面白いと思っている、先ほどのレイブパーティーが起こるような都市は、このように実現できるのではないかと思います。芦澤さんが先ほど言われた、消費の対象としての都市ではない都市というか。それで、どんどん参加の人数を増やしていくと、建築がどんどん複雑に多様化していくことを、何となく実験している感じです。

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