樋口:今日羽渕君きてますけど、彼が現場責任者。学生とみんなでつくるんだよね。こういう立派なのができる。土を掘るワークショップ。労働、ただただ身体を動かす。雨の日も風の日も。これはお祭りのワークショップ。こういうワークショップを自由にできるっていうのがやっぱり地域、地方の、地方っていってもいろいろあるけど、北海道なんかの特色。だから都会ではできないようなことをやる。これは橋建設。壊されちゃったんで、記念に。これ全部埋めちゃって土の中に。かっこいいのこれ。

芦澤:あ、もう埋めてしまったんですね。

樋口:ここから雪氷。時間がなくなっちゃうね、やめようか。
これさっき埋めちゃったやつの中をつらぬく外。僕ら光の井戸っていうんだけど。

芦澤:構造はRCなんですか?

樋口:RC。
「幸せになれよ」はさっきからでてる寅さんの、とらやの空間っていうのはね、僕は20世紀の最大傑作じゃないかって思ってんだけど、空間の自由がある。これいろいろ書いているけど、要するにいろんな行為を誘発される。土間があり、縁があって畳間があって中庭あって階段があって、非常に豊かな。皆さんが設計するのは、階段は2階に上るためにあるけど、ここでは劇場だったりする。皆さんが設計する和室はなんかせせこましいけど、ちゃんと小さいけど縁が付いてる。それでね、ここに書いたのは日本国憲法。僕が憲法って言うと変なんだけどさ、憲法からとった言葉です。この中で気に入っているのがね、自由である権利、幸福追求をする権利。つまり建築家っていうのは、やりだした時から、僕たちはこれを奪われている。誰が奪ったか知らないけど。もう1つは、例えば、日本の公共建築っていうのは国家がボリューム決めて、機能を決めて建築家に渡す。建築家に形だけ考えさす。そのあとなにやったって同じだよ。僕たちは何を考えなきゃいけないかっていうと、憲法に書いてあるような自由と権利の保障、取得とかね。僕たちはいま特に、どんどこどんどこ自由を奪われて、表現の自由をどんどん奪われる。つまり周りが決めて、最後のカスを建築家に寄越すの。カス、要するに銀座なんかに建ってるのは、カスを喜ぶ建築家と、カスしかできない行政の人達がグルになって決める。ところが、あれはカスだよ。
これ塩を作ってるアジアの、タイの東北部の田舎の家、こういう空間を美しいということに決める。ここから東京奥多摩の知恵おくれの施設です。ここは、30度の斜度。3段の水平面を作るんですけど。簡単に言うと擁壁造りみたいな、すごく気に入ったのは建築より土木に近くてダムだね。とっても良かった。水平面の屋根にはプラスチックのドームを架けて。

芦澤:半外部的なスペースですか?

樋口:そうそう、半外部。
ここで終わって、7部が8分かかるから止めようか。7部で実は、100枚くらいばーっと今まで話したイメージをやろうと思ったけど、時間がなくなっちゃったから…。8分かかるよ。どうする?

平沼:やりましょう。この間に、芦澤さんどうですか?

芦澤:樋口さんご自身は、放浪はやはり常にされている感じですか?

樋口:いやあ、6年前に胃がんになってさ、3ヶ月前に大動脈解離っていうのをやってね、放浪無理になってきた。

芦澤:それまではずうっと、放浪を?

樋口:放浪でもないけど、気分は放浪だったけどね。移動ばっかしててね。

芦澤:これは、いろいろ行かれたときのスケッチですとか、ていうことですか?

樋口:…。

平沼:ふふふ。

樋口:説明なし。無言。

平沼:じゃあ、この間に会場からの質問入れていいですか? 今日ね、217の1年目に登壇くださった山崎亮さんがお越しなんですけど。実は昨日、樋口先生の事務所に行かれてて、どうだったのかっていうところと、山崎さんから見られる樋口先生の活動なんかを、お聞かせいただいたらなあと思って。皆さん大きな拍手でお願いします。

会場:(拍手)

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