樋口:これはベーロン大会。この人の下に僕たちのデザイン。デザインなんか見えないほどいい。人様に見せるもんじゃない。
ここから県庁舎です。冬山河をやってたら2つの仕事を頼まれるんですけど、ひとつは縣庁舎と縣議会、それとその周辺に1万8,000人のニュータウン。なんか巨大な計画を頼まれて。これが縣庁舎の写真ですけど、この時、建築の3つの事をたのまれる。建築の公園化、建築の土着化、建築の親民化。つまり、公園みたいで人に親しまれて、それで、地域に密着土着せよと。こんな条件を相手が出してくれたらねえ、これはやらざるを得ない。つまり僕たちにとっては、勝手にやっていいよと。ということは、表現の自由とは何かを問われている。
勝手にやっていいよと言われたら何ができるか。興味ある人は台湾の宜蘭ってところです。見に行ってください。中も、ちょっとディテールまでやり過ぎてるね。5年ぐらい時間があったもんだからさ、やたらやっちゃうんだよね。やりすぎだね。ただ相手の情熱がすごくて、毎日のように夜中の3時ごろまで会議。そのあと縣知事を始めとして、おかゆ屋でおそい晩めし。ついやりすぎてしまう。

芦澤:建設コストは、まあまああったんでしょうか。

樋口:建設コストは面白くてね。さっき言ったでしょう、我々のまちは我々がつくる。

芦澤:はい。

樋口:全っ然足りないの。だからどうするか、2年目にまた取るの。

平沼・芦澤:あ〜。

樋口:また足りない、3年目にとる。だから5年かかる。日本みたいに、予算いくらで面積いくらないとダメですよって言わない。その度に夜中の3時まで会議。しびれるよね。一番ここで面白かったのが、右側は山なんだけど、山の中にがらんどうの空間がある。これは、実は僕たちの読みが甘かったんだけど、全部土でやると重くて傾いちゃう。空っぽにしなきゃなんないって空間が先にできて、県の資料館になるんだけど。一体何に使うのっていう話を、5年の間かけてやる。これがその中。これ、かっこいいでしょ。土の中にあると空間って違ってね。この中で、設計に迷ってる人がいたら、まず埋める。いいよ。

芦澤:ははは。建築をですね。

樋口:そしたらね、内部空間が変わる。これは、僕が好奇心、想像力とか生命を、設計の時どう考えているのか、この中で矛盾っていうのが非常に大切で、矛盾していることを楽しむというか、矛盾を意に介さないというか。大体僕の存在自体が矛盾してるっていうような。あるいは、大阪なんか原爆が落ちたらいいと思ってるけど、こうやって公演やってるとかね、矛盾してるわけで。もう一つの仕事は、さっきの冬山河の公園を見て、廟っていうんですけど、仕事を頼まれて。小さな五千人かそこらの街から。廟って、お寺、知ってる? 台湾に行くといっぱいある。道教のお寺で、そこのおじさんたちが大勢きて仕事を頼んでくれた。この火祭りとかね。これが神様だけど、小さい神様がいっぱいあんの。僕もね、死ぬともしかしたらこの神様になれる、こんなチビの。

芦澤:ふふふ。

樋口:で、25、6年経ってるんですけど、実を言うと。やっと躯体が打ち上がって。彼らは何をしているかというと、僕らに巨大な模型を作らしてお金を集めてる。今躯体が打ち上がったけど、将来こうなるはずなんだけど。

芦澤:あ、まだ終わってないんですね。

樋口:まぁ、生きてるうちは無理なんだろうね。今まで25、6年かかってるからね。

平沼:え、そんなに?そんなにですか? そうですか。

樋口:だからさっき言った生命というのはね、例えばヨーロッパのカテドラルも平気で200〜300年かけているでしょ? 日本、アジアはね、木造で壊れてくっていう文化があって。壊れていくっていうのはね、ものじゃなくて様式とか形式を残すから、いい所はいっぱいあるんだけどさ、ちょっと長すぎるね。

芦澤:いやいや。

樋口:次は、場所をやります。これは浅丘ルリ子、リリー。男はつらいよの中でリリーさんを知ってる人、ん、少し減ったね。

芦澤:ははははは。

樋口:建築もいいけど、今日の僕のお願いは、帰ったら、「男はつらいよ」全48巻見てね。

芦澤:ははははは。

会場:(笑)

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