北川原:いや全然そうじゃない。たまたまだと。僕も考えてなかったんだけど、確かに言われれば十字架なんですね。それで実はこの日本館も各国のパビリオンはリユースを義務付けられていて、解体して捨てたらいけなくて、何かに利用しなくちゃいけないんですよ。なので、これを解体したら教会をつくろうということでミラノ工科大の友人たちが、今、色々と考えてくれているところですね。

芦沢:次は構造材としても使われているのですか?

北川原:もちろん。ちゃんと3年かけてね、大臣認定をとって。

平沼:僕、4月くらいに現地にいさせてもらったんですけど、工期間に合いました?

北川原:あのね、日本館が一番早かった。着工も日本館が一番早かったし。

平沼:工事中、一番目立っていたので。

北川原:それは他ができてなかったからですよ。

平沼:ははは。すごいなと思って。

北川原:日本の起工式をやった時には他、誰もいないの。さら地で、120ヘクタールくらいあるんですよ。そのなかでぽつんと日本館だけ紅白幕張ってね。日本人ってほんとまじめだなあって思われたと思いますよ。

平沼:ははは。

北川原:ちゃんと3月31日までにできたんですよ。日本の役所ってすごいからね。もうとにかく何が何でも期限守る。それもね、日本だけ。他の国はみんなのんびりしててね、イタリア館なんかは5月1日のオープニングのときにまだできてなくって入れなかったんですよ。主催国なのに。日本館はまじめに5月1日に開館。4月の1か月間でトレーニングとかね。ほんとに日本人って真面目だよね。真面目すぎるなと思って。そんなこと言うと経産省とか皆さんに怒られてしまいますけど。(笑)僕9月に、公共建築協会の人たちと様子見に行ってくるんですよ。

平沼:会期いつ頃まででしたっけ?

北川原:10月末。でもほとんどのパビリオンができたの、7月くらいなんですよ。だから12月いっぱいくらいまで伸びるんじゃないかなと思っています。

芦沢:ちょっと質問いいですか?建築形態というものをどの様に導き出されていますか?何か、手法みたいなものって北川原さんお持ちですか?

北川原:原先生とかね、槇先生とか、きちっとそういうのを確立されているでしょ。僕はね、ないんですよ。だからそれぞれのプロジェクトでどう考えたかっていうのをお話するしかない。
これはレオナルド・ダ・ビンチの流体研究をやったときのスケッチです。実はこれが福島のビックパレットのデザインコンセプトを考えるきっかけになったんですね。結構大きな建物で、2万5千平米くらいあるんですね。3.11の大震災で被害を受けたんですけど、この建物があるのは郡山市というところなんです。郡山っていうのは猪苗代湖から水を引いてきて、工業が発展してできた街なんですよ。なので、水から始まっているということで、最初に考えたのは水滴とか水のイメージ。で、ダ・ヴィンチのデッサンが昔から好きだったものですから、本を見ていたらこれなんか参考になるなと思いながら、楕円形のスケッチをやっていてそのうちにだんだん水から離れていって、巨大な建物なので軽くつくるべきだなと。いかに軽くつくるかということで、モーターグライダーですね。僕らが乗る旅客機って、ものすごいジェット燃料を使って空気をつんざいて、要するに空気抵抗に逆らって無理矢理飛んで行くじゃない。あれってやっぱり変ですよね。それに対してモーターグライダーは気流に乗って、モーターを止めて滑空すると、本当に音を出さずにすーっと大空を飛ぶんですよ。それがとても美しいなと思って。そういうのにしたいなと思って、建物の屋根はカーボンファイバーでつくっているんですね。これだけのスケールのカーボンファイバーの屋根っていうのはこの時点では世界で初めてだったんですが東レの研究所が率先して受注額の何倍も投資して開発してくださって、それでこれが完成したわけです。これ全部カーボンファイバーで出来ているんです。

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