芦澤:芸術も昔から好きでしたか?

原 :そうですね。音楽とか。僕の趣味は色々あります。麻雀だとか、それから将棋。

平沼:麻雀好きは大変有名な話しですが、将棋もでしたか。

原 :そう。毎日将棋の問題を解いているね。毎週、将棋新聞は全部読んでいるし、将棋世界っていう雑誌も読んでいる。でも建築雑誌は何も読まない。それから、スポーツは札幌ドームをつくった関係でサッカー。世界のサッカーを見て、日本の不甲斐なさっていうか、日本のサッカー協会も何やっているんだって思うし、その選手たちの態度はなってないし、あんな事で勝てるはずがないと思っている。

平沼:うん。態度という姿勢が駄目じゃないですかね。

原 :日本のサッカーは、ああいう姿勢そのものっていう部分を根本的に治さないとね。

平沼:そうですね。

原 :日本のサッカーはメディアで幻想をつくっている。コマーシャルが作っているから、その幻想を抱かせる事をやっているだけで。世界レベルでは、全然話にならない。
 でも、建築は違う。建築の方が上だよ。これは、間違いないです。アメリカとかヨーロッパを問題にしてないと思うね。少なくとも建築は、態度の上でも全然違います。真面目さっていうか姿勢がね。
 僕は、札幌ドームという建築を誇りに思っています。サッカーだとコテンパンにやられるだろうと思っているから、それじゃあ、絶対、世界に負けないスタジアムを作ってやろうと設計チームで団結しました。大成建設の方々だとか、竹中工務店の方々だとかと。こういう事を、やれるんだ!という事でやったわけです。でも、ほんとにサッカーは駄目ね。あんな試合やって日本の象徴なんだからな。
 戦後、僕らや僕らの世代が、馬鹿みたいにやって、やりつくした90年代までの日本は、世界における競争力が1位だった。僕はナショナリストではないし、競争力だけが価値だとも考えませんが。でもあまりにも凋落が激しすぎるし、今日本は国際競争力が30位くらいでしょ?30位って何っていうとさ。知っている国を言ってごらんって言ってさ、言えた国より全部負けているよね。だからそのくらい駄目だっていう事をみんなで確認をしない、というのかな。自覚をしないって、いうのかな。でも、建築は今も良いと思います。
 今日は、建築をやっていない方々もお越しくださっているように聞いています。建築にはいろんな関係の仕方があるから、話として分かりやすくするために、住宅の小さな建物と凄く大きなプロジェクトを対比して話したいと思います。大きな方は、僕がやった3つのプロジェクト。梅田スカイビル、京都駅と、それから札幌ドーム。他のプロジェクトと全然スケールが違うわけです。建築家っていうのは、違和感なしで同時に様々なスケールの建築をやるわけです。ただ、スケール音痴にならないように、注意しないといけないですね。寸法、物事には適度な寸法体系があって、その寸法体系を間違うと、せっかくのチャンスを平凡なものにしちゃう。日本人が持つ伝統として持ち合わせたもの、木割とか茶室のように、そういうものを持っているわけだから、それを活かしていく。
 まず始めに、僕の家です。(「原邸(1974)」)40年経ちましたが、依然として何も変わらず在ります。ただ周りの環境は非常に悪化しています。対称形につくってあるのですけど、一日に一回、光の差し方で空間が対称になるという時間軸を取り入れた建築ですね。これは反射性住居と呼んでいます。
 話は変わりますが、音楽の世界で、アーケイドファイア(Arcade Fire)とかレディオヘッド(Radiohead)というグループがいるのは皆さんご存知でしょうか。趣味の事でもう一つ加えると、ポップミュージック。音楽全体に詳しいんですが、毎月研究会を毎月開くくらい、ポップミュージックに非常に詳しいのです。(笑)

平沼:(笑)そうだったのですね。原先生がレディオヘッドを詳しくご存知だなんて、はじめて知りました。

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT