芦澤:今のは、造形的な視点だけで見ると今まで高崎さんがやられた、非常に有機的というか、独自のボキャブラリーとは全く違う伝統的なボキャブラリーに見えます。なにか理由はありますか。

高崎: 1つは材料が少ないのでゴミを出さないです。ダンボールは有害物質が発生するので、人体に危ないしゴミになります。長期に耐えられるもので、素人でも誰でも組み立てられるものをベースにしていて、ちょうど50歳の頃に、当時桂離宮とか日本の茶室など、和風化されたものを徹底して勉強していました。それで機会が来ましたので、日本建築をベースにしてつくりました。これは被災地で、木造建築の6階建てです。これと防潮堤を提案しました。これは超高層、地上100階建ての高層ビル、いわゆる自然エネルギーを使った超高層を提案しています。これは、軽井沢と桜島でやっている子供造形教室で、小学生と幼稚園児に、建築を作ろうよって言うテーマで開催したワークショップです。これは個別に自分を追求する住まいです。これは僕が日頃書いているドローイングで、絵が上手かったのですが、ドローイングだけでは、結局つくらないと説得力がなく、相手にされないので、一時期でやめました。また最近復活させましたが、新しい人間の理念を表現しようというテーマで、建築化しようとしています。光とか、水の空間というそういう自然の5大ものが全て入っている空間、建築を作りたいというプロジェクトです。これがいいなっていうクライアントがいたら、すぐ新しい建築が完成しちゃいます。

平沼:唐突ですが、なぜ建築を辞められないのですか。

高崎:建築やっているとやっぱり気持ちがすごく疲れますよね。商品住宅やマンションを買ったりして、建築を建てる人はいなくなってきました。建築やマンションを買うとか、そういう時代の流れと建築は随分向き合っているから、非常に疲れます。テンポがすごく速くなって、落ち着いて図面書いたり、現場に行ったり、木材選んだりとか、そういうことがなくなったので、逃げたくなることはよくあります。

平沼:昔は関西や地方にも大勢良いクライアントがいて、そういう人たちが、建築家に頼むケースがすごく多かったのに対して、最近の若いIT企業を中心に会社を運営されている社長が、東京都心に住み、今言われた高層マンションに住む機会が多いです。こないだ宝石を扱う社長にあった時に、どうして作らないのですか?と質問してみたら、作るのにエネルギーがかかって、面倒くさいそうです。上の世代の社長連中のこだわり方を知っていて、それをやるには自分が引退してからじゃないと、取り組めないスピードが今はあって、出来ないと言われました。

高崎:世代関係なく、時代がそうだと思います。例えば、建築を作るのは子育てや、学校だと学生を育てているのと同じだから、我慢強くないと、設計なんて出来ないです。また一方で職人さんが少なくなっていて、この人達を指導したり、気持ちを和らげたりしないといけないので、なかなか手ごわいです。

平沼:今後どのような建築を作りたいですか?

高崎:先ほど少し言いましたが、日本建築を世界の建築の中に位置づけて、世界の人に見て欲しいというのが今の僕の夢です。今そういうプロジェクトを東京で2つほどやっています。最近、日本の和食が素晴らしいとかいい、世界遺産に登録されましたよね。長い間日本人は外来の文化を取り込んで、日本化している、それを日本人は和風化というイメージに昇華してきました。日本の建築は継ぎ手仕口のような極めて大変緻密な構成で、さらには環境にももちろんにいいし、それでいて優しいのです。素晴らしいことを世界の人に知ってもらうことを、やりたいと思っています。その先は、今はまだどうなるか分かりません。

芦澤:和風建築は、日本の中でも成熟した建築として、今でもやられている方ももちろん多くいらっしゃいますし、そういう建築家たちとは違う高崎さんならではのやられ方とか、発信の仕方をお考えなのですか?

高崎:それは使い方をちゃんとしないと、伝わらないです。和風建築では世界に通じません。民族様式になってしまいます。その民族性を脱却し、新しい建築理念で、日本建築を作ります。和風でなくて僕は独自の日本建築を見せたいです。その民族性を脱却しないと、本質は伝わらないので、その伝え方はすごく大事だと思います。

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