平沼:そもそも高崎さんご自身にとって建築とはなにですか。
高崎:建築は、すべての人が関わらざるえないものです。自然は神が造ったもので、そこにはみんなが関わっていきます。建築空間はすべての人に刺激を与え、宗教的、哲学的、文学的でもあり、心理学でもあります。建築はそういうすべての意味を持っています。そういう面白さが建築にあります。20歳の成人式を迎えたころから、綺麗にドローイングしてやろうと思いました。僕は当時、和紙に墨で絵を描いていました。そこに、物こそ人なれというメッセージを込めました。この作品は3階建ての住宅で、想定は木造建築です。これをドローイングして、模型写真も出ています。これが初の物人建築を宣言した時の住まいです。これは14歳の時で、瞑想を題材にしています。当時は魔の19歳といって、自殺する人がかなり多かった時代でした。中学生の時に少し倫理学を勉強すると、親戚兄弟とかの影響を受け、この世の中から逃げちゃダメだ、ということを追求し、そこから人間の根幹を瞑想としてとらえました。こうして『瞑想真(めいそうしん)』と名付けた、四畳半の二階建ての住まいが僕の初めての作品になりました。個と真摯に向き合うということがテーマです。
芦澤:あの、最初の、物こそ人なれっていうのはどういう意味なんでしょう?
高崎:これは、天から降りてきた言葉です。そういう傾向が私にはあります。ぱっと、自分の意識に関係なく出てくるものってあるじゃないですか。それを捉え、ずっと考えて、なんだろうなと思い、物質と精神をどう捉え、どう融合していくかということです。
平沼:これは何歳くらいですか?
高崎:これは19歳の頃です。これは、初めての住宅で、地下1階、地上2階建ての住宅で、見た目には、巨大な岩が白い砂の上に置かれています。京都に枯山水、禅のお庭、石庭がありますが、そういったものだと捉えていいと思います。当時は私には禅というものにはあまり意識がありませんでした。建築には見えない巨大な岩の中に人が住む。真ん中が割れていて、そこから自然の光が入ってくるものを作りました。一種の実験住宅です。
芦澤:実際に、コンクリートを打ってつくられ、内部空間もできているのですね。
高崎:これは先ほどの、物こそ人なれのドローイングの模型です。人間の中に血が流れていて、血管があり、それがこう宇宙を支える、地球を支え、住まいを支える。ということがモチーフです。この木の人間の手の形がそのまま、樹木の形の追求です。ゼロの空間、循環する空間、そこを宇宙の木が循環し、手で支えられるというテーマで作ったのが、さきほどの墨のドローイングを具現化したこの模型です。
芦澤:マールランドというお言葉は、どのような意味でしょうか。
高崎:僕がつけた愛称です。世界をまわることを、トラベラーとか、あるいは循環と言いますよね。循環世界のことは難しいけれど、分かりやすくマールって言って、なんだったら国と言ってマールランドと言っています。これは、19歳のときの作品で、ゼロコスモジーというゼロの空間です。仏教的にいうところの空の世界を表すのがゼロです。その次に発表したのがゼロワン。世界に向かって飛翔します。プログラムとしては、斜面地に建つ住まいです。これが住まいで、ここが彫刻庭園です。ここが俗の世界です。この俗を引き連れて、その俗のエネルギーを空に放つという感じです。翼がついているのが特徴ですね。ここは住まいと、オフィスになっています。それから、アトリエを持つ住まいとオフィスです。単一機能を複合化し融合している形になっているわけです。
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