平沼:より自然的なってことですよね。段々わかってきました。次で最後ですか?

平田:そうです。最後です。
これは、釜石という場所で、震災による津波で被害を受けた所の災害復興住宅と子供園のプロジェクトです。これは今までのものと系統が違うように思われるかもしれませんが、僕の中では非常に繋がっているプロジェクトなんです。震災が起こった後、これから建築どうすんだって話が特に東京では行われてたんですが、僕が思ったのは、津波にしろ放射能の話 にしろ、ネガティブな形であったとしても、全部流れに関係していて、地形とか、すごくベーシックな自分が住んでいる環境に人間っていうのは影響をうけて、それに左右されて翻弄されて生きていくしかないんだという感覚に根ざし て考えないといけないんだろうなっていう感じがしました。そういう話と、とはいえ被災地で非常に困っている人達がいるわけですから、建築で、建築家がそこで建築のアイデアを使って、何もできないとしたら非常に良くないんじゃないのかと。知恵を絞って建築でやっていくことで何かを つくりだす努力をした方がいいんじゃないのかなと思いました。
このプロジェクトの画像をみて特に屋根が目立つと思います。 たしかに屋根っていうものをどういう風にとらえるかを再考したところがあると思います。 。僕は 屋根を使ったプロジェクトを独立した当初からやってたんですけど、屋根って面白いなーと思うのは、上空から見ると屋根と自然の地形の形って近いんですよね。自然の地形は、水が流れることによってできていて、屋根は水を流すために作られ いる。要するに水というのがカタチの背後にある。 かたちの背後に雨水の流れ があるということが屋根と地形が似ている理由なんじゃないかと思います。つまり 考え方によっては屋根というのは人工物というより自然に近いものだなと。水が作った形だから、人間が作ったと言うよりも、人間が 水に作らされているだけかもしれないものだなーっと思って、屋根に興味があったんです。
震災の後、屋根問題というのがちょっとまぁ色々浮上して、あの僕、伊 東豊雄さんと「みんなの家」というプロジェクトを3人の若い建築家で、藤本君と後、乾さんと3人で設計した時も、屋根みたいな形を入れた方がいいんじゃないかという議論になった時に、屋根イコール地形っていう 即物的な視点、先ほどから言っている、人間を微生物って言ったりしたりしてる視点とは、ちょっと違った次元の、もうちょっとベタな「記憶」とか、流されてしまった家の 話をどっかで取り入れないと 上手くいかないんじゃないかなって感じはしていました。微生物云々っていう話を仮に人間は動物であるっていう話に還元して、「動物的」な話だとしますと、その屋根が記憶云々っていうのは、「人間的」な話なんですよね。動物的な話と人間的な話っていうのを両方とも持っている状態を作れたら面白いんじゃないのかなっていう風に思ったんですよね。 で、この釜石のプロジェクトでは、みんなが共有する場所をシンボライズする屋根という人間的な側面と、風をモデレートする屋根という即物的あるいは「動物的」な側面を併せ持つ屋根を提案しています。

芦澤:植物的な話とかは?

平田: もういちどサマライズするとこのプロジェクトでは3つのことを考えています。最初に地形に寄り添って生きること、次にみんなの場所をシンボライズすること、最後に風をモデレートすることの3つです。1つ目の地形の話なんですけども、釜石というところはご覧のように非常に切り立ったひだ状の山によって特徴付けられていまして、敷地はここです。今は仮設住宅が建っていて、ここに中学校が立ってたんですけど、この辺が建てる場所で、この後ろも一緒に防災公園として開発するっていうコンペだった。 よく見ていると、道が谷沿いに伸びていっていて、谷に出来た道にからむように住宅が建っている 。であれば、先ほどのこの敷地は中学校だったりしたものですから結構平らに造成されていて、わりと近代的な様相 の土地形状をしているんですね。ここでこう穴が開いたような感じで、小さくひしめき合っている状態じゃなくてガパッと造成されているんですが、この場所はもう一回、その道によって地形を整えるということによって何か微地形みたいなのを作っていけないか 。まずこの順路と逆に道を作って、道を谷線に見立てることによって全体の計画をしていけないかなと思 ったんです。これが一番太い道路なんですけども、一番大きな谷筋なんですね。この谷筋が道を派生させて、そこをちょっと浅い谷にしていくことで、周りにこの谷筋に広がっている道と接続する地形みたいな物を作っていくことを全体のテーマとしています。 そしてこの道が 部分的には立体的に 伸びて 集落みたいな集合住宅のアプローチになっている個とを考えました。

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