平沼:こんばんは。よろしくお願いします。簡単に自己紹介お願いします。
平田:こんばんは、平田晃久です。大阪の堺市で生まれ育ちまして、大学も京都で、1997年に伊東豊雄さんの事務所に就職して、その時から東京です。
平沼:大阪で独立しようとは思われなかったのですか?
平田:とりあえず、東京の方が機会が多そうなので、そのままいようと思っただけです。
平沼:なるほど、賢明な選択だと思います。では、なぜ建築をやろうと思ったのですか?なぜ建築学科に入られたのですか?
平田:理由はいろいろあると思いますが、幼いころ結構虫取りが好きだったので、毎日周りの山とか林の中をずっと歩いていました。その時に、外の空間の感じと建物の中に入った時の感じが全然違うなと思い、建物というものは何とかならないのか、と小学生の頃に思ったのです。建築の分野だったら自分は何かできるかもしれない、と漠然とした楽観的な見通しがありまして、その進路を決める時に建築を選ばせた理由なのかな、と今となって思いました。本当は科学者に憧れていたのですが、最後の最後に建築に行きました。
芦澤:いつくらいから科学者になりたいと思っていたのですか?
平田:高校から大学受験する直前まで。生物学だったら何かできるかもって思ってたんですよね。
平沼:虫取りをやってたからじゃなくて?
平田:虫取りは多少関係あると思いますが、生き物とかそういうものが好きなのですかね。単純に生き物が好きというか、不思議なところが好きで、そういうことをやりたいなと。
平沼:なるほど。これから見ていくプロジェクトに繋がってきました。早速にプロジェクト紹介をしてもらっても良いですか?
平田: 「からまりしろ」っていうキーワードを僕は最近言っていて、まずそれを説明したいと思います。基本的に「建築」っていうのは人間が人間のために空間を作ることですけど、そこで人間をもっと突き放して見れないのかなという所が僕のスタート地点です。元々、人間も動物も生物の一種なので、そういう視点で人間を見直して、建築も見直していくとどうなるか、ということを考えようとしています。例えば、東京の夜景ですけども、見方によっては細胞の中を覗き込んだみたいなものにも見えると。不思議なのは一個一個の建物は、割と人間がそれぞれの意思で意識的に作って、総体として都市のうごめき方っていうのは自然にそうなっていくものなのかもしれないと。人工的だけど、全体としては非常に自然に近いようなことが起こっている。そういうところが面白いなと思っています。で、その視線でもう少しズームアウトしていくと、農業営んだり、あるいは 都市を作ったりすることというのは、 地表面をもこもこもこもこと発酵させるというか、様態をより活発な状態に変えていく行為なのではないかと思います。それを真上から見ると、人間は地表面を発酵させている微生物みたいに思えてきて、建築というものは発酵させる作用の一部だと。僕は「からまりしろ」って呼んでいますけど、何かが起こるきっかけが増えていくというか、こう引っ掛かりしろみたいなものが増えていったりするような活動ではないかと思っています。
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