芦澤:少しお伺いしても良いですか?

平田:はい。

芦澤:非常に面白い丘のような山のような住宅だなと思ったんですけど、基本的にワンルームですか?

平田:ワンルームですね。

芦澤:プライバシーとかは?

平田:プライバシーは、もちろんトイレとかは仕切っているのですけども、ベットルームとかは仕切っていないです。将来的には仕切れるようにはして、倉庫とかはちゃんとあるので、クローゼットがつくれない建築のアイデアではないですけど、あえてつくっていないというか、私空間がずっと繋がっているのが、施主さんの希望でもあったので。

芦澤:子供が将来的に部屋が欲しいとなった時は作れるということですね。
こういうワンルームをやろうとしたときに、温熱環境とか、風の通し方とか、心地良さとか変わるのかなと思うんですけど。

平田:垂直方向に結構風がぬけるということは、窓の位置を立体的に斜めにして、空気が抜けるように、可動部分の位置を工夫したりしました。初期予算があまり大きくないからエアコンは限られた所にしかおけなくて、もちろん暑い日は暑いですが、なにも風が抜けないよりは涼しいし、冬もそれなりに快適。

平沼:子供がすごく楽しそうですよね、

平田:子供のふくらはぎが鍛えられると思います。

平沼:続けてもう一題住宅いってもらってもいいですか?

平田:はい。これは、東京の大塚いうところに作る予定です。ギャラリーのオーナーの自宅が一番上にあって、真ん中に集合住宅です。僕が建築を作るときに、ある筋道をつけて建築を作りたいとは思っていますが、建築がその筋道の表現としてそれだけで自立しているだけではつまらないと感じていて、例えば、一本の木を見ても幹があったり、枝があったり、葉っぱがあったり、一個一個を見ると全然違う様態が一個のものの中に含まれているような事に近いことができないかなと思います 。500平米くらいの建物を建てるわけですけれども、 1)箱状の ストラクチャーを間にボイド を作りながら 積んで行って、2)その箱に ひだ状の開口を開けていき、3)その周りに植物をからませるという、三段階でできています。箱を積むと、少なくともストラクチャーが成立する というか、 大枠としては建物として成立している 状態をつくって、その上に開口を 襞をなすように開けていくと人の身体との関係がいろいろ出てくる。また、外の空間と 内の空間が混ざっていく 。さらに植物をからませる ことによって,全体として 呼吸しているというか、一本の ネガの樹のようなものができるのではないか。
内部の空間は割とワイルドで外に近いような環境 です。つるつるピカピカの未来像と言うよりは、少しザラザラとした感じを作りたいなと思っています。 建物の輪郭が発酵して崩れていくみたいな感じのイメージです。
常々思っているのは、内部空間と庭とか道も一緒くたに積層できないかな、 都市の組織そのものを立体にしていくといったことができないかなと。 こんな小規模なプロジェクトでそこまで過剰にやるか、といわれてしまいそうですが、もっと大きなものにつながる一つのモデルとして、あるいは、そうでなければ生まれないような非常に豊かな生活環境として 、つくることに意味があると思っています。


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