平沼:なるほど。それでは次のプロジェクト行ってもらってもいいですか。

平田:はい。台湾の 高雄って南の町があるんですけども、そこに建てる予定のポップミュージックセンターと海洋文化施設のコンペティションの案です。惜しくも2等だったので実現しませんけど、いろんなきっかけを作ってくれたプロジェクトなので持ってきました。 高雄って町は海の民家で結構有名な町で、海に面しているんですけど、サイトが 高雄の町の真ん中を流れている川が海に注ぎ込む所の河口のところです。町の「つぼ」 みたいな所で、こんなすばらしい敷地 は無いだろうなと思ってコンペに参加しました。 海と陸が出会うところをシンボライズすることがまず重要ではないかっていうことで、気体と液体があうところに泡みたいなものがあるというふうに考えました。 泡のようなものでできた巨大な水平のシンボル。
街に、李宗玄という人がデザインした非常に高い垂直のシンボルが建っているので、それに対抗するのも意味ないので、徹底的に水平で低いものにこだわろうと思ったんですね。 実はコンペの要項の中にこの中にどこかにタワーを建てなさいという話があって、それを無視してたんですね。どこかに小さいタワーを立ててたら1票入れてたよ、と最後に役者のおばちゃんが言っていました。その1票差で負けたんですよ。コンセプチュアルには、なくていいと思うんですけれどもね。もうちょっとサービスしてたら、建っていたかもしれないと思うとなかなか難しいもんですね、建築っていうのは。
全体が一つの環境として、 泡のようなストラクチャーの上に水を流したりすることによって、 そよ風のネットワーク のようなものをつくり出すことを提案していました。まわり の気温 より数度涼しい公園みたいな場所をつくっていくという考え方です 。
中が何もないわけじゃなくて、色々泡から派生した様々な場所がひしめき合っ ていて、たとえばオーディトリアムとかスタジオとかそれぞれ 特徴ある内部空間が泡の中の島のように浮かんでいます。 一番シンボリックなのは川の上にかかっているブリッジです。 河口というのはまさに街が海に出会う場所であって、海の街をシンボライズする場所ですよね。 川幅が125mありますが、柱一本も落とさずに三次元的なトラスの加工を、骨というか泡というようなもの立体的なストラクチュア架橋しています。同時にこの泡のような3次元的なストラクチャーが 人々のための からまりしろになっているわけです。台湾の人とか本当に写真撮るのが好きなんだけれども、この橋の上で必ず 記念撮影する ようなところができたらなと思いました。ローマにスペイン階段があるように、タカオにこの橋があるというくらいのものを現代建築がつくれたら、すごく良いのではないか 。コンペ ですけど、近くの工場が協力してくれて、モックアップまでつくった 。どういう工程でつくるか全部明らかにして、大体工期がこれぐらいで間に合うとかそういうのも全部出して、いくつのパーツに分けるか、これは結構巨大で30m×40mぐらいのものをワンピースにしてタグボートで運べばいいという。さすがにここまでモックアップは作ってくれませんでしたけど。船の町なので、本当に無数に船の工場があるわけですよ。 そのうちのいいとこ2,3個を選んで この建築をつくればいい。船の工場がこんなに近いサイトって世界中探してもないと思います。 だから、建物のコンセプトの部分も海と関連していますけれども、ストラクチャーを作る産業レベルでもこの町の海の文化と深く結びついていて、総合的に一つのシンボルとして現れるというような案です。

芦澤:これは指名コンペですか?

平田:オープンコンペです。オープンで2段階ありまして、1次は選ばれて通って、2次は資料を作って 直にプレゼンテーションするという形です。

芦澤:なるほど。結果的にはどなたがとられたんですか?

平田:スペインの若い建築家ですね。本当に悔しかったですね。コンペだから仕方ないですよね。

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