青木 : はい。ここまではね、人に見せたことがあるようなものなんだけど、こっから先はあまり見せたことがない、つまり現在進行形のものです。実は青森の美術館ができてから、結構悩んだんです。やっぱり、やりすぎかなって。迷いっていうのかな、どうやったら自由な感じをつくれるのか考えているけど、どうやったら良いのか。そのオーバードライブなのか、あるいは形式なのか、素材の感じなのか未だにわからないんですよね。その迷いをお話ししますけど、今やっている荻窪スポーツセンターっていう建物があります。これは東京の古くからある住宅地のなかで、もともと小学校だったところ。そこに地域のための、競技というよりも体力増進のためのスポーツセンター。体育室と体育館それからプールです。コンペだったんですけど、まず思ったのは、周りが住宅地だから、そこにボーンと大きな施設ができちゃったら辛いだろうと。知っている体育公園で、グラウンドがあるんだけど、そのグラウンドの周りにはNPOが園芸をやっている公園があって、それがすっごく良かったのね。というのは、園芸やる人とスポーツやる人っていうのは同じ場所でありながらだぶっていない、違う人たちですよね。例えば競技をやっていて、休憩時間にお弁当を食べるときに、こっちの園芸の所に出て来てそこでお弁当を食べると、おじさんおばさんが子供に話しかけたりするというふうに良い関係があって、これ良いなと思って。こういうスポーツ施設を住宅地につくるなら、ぜひ園芸を味にしたところが良いなって思って。それで、最初は丸を大きくつくって周りを保ったけど、なるべくそうしないで小割りにして園芸の場所もつくっていこうと。卵みたいな格好の場所をいっぱいつくっていくと、例えばこうやって園芸の巣、丸い所があるとか。それで、建物はすっごく低くして地下二階建てでつくって。一階分しかでてないので、周りは二階建ての住宅地だから、周りから見れば見下ろす公共施設で屋上が見えると。だったら雰囲気としては公園みたいにしたら良いんじゃないかというのが提案なのね。地下二階建てなので、地上から潜らなくちゃいけないということで、入り口どうしようって結構迷って。同時にその入り口が重要だなって思った。これは入り口の提案なんですけど、まずすり鉢状にした少し下がったところのこの丸い部分から入る。こういう入り方が良いかなってまず思ったんだよね。これは断面で見るとこうなってまして、ピョコンって見えたものが氷山の一角、下にすごく巨大な構造体になっていると。そこから入ると地下一階に下りていって、そこにプールを置いたり、体育室に行ったり。サーキュレーション、かつトップライトでもある場所をつくろうと。中から見上げると光がサンサンと入ってきて、下には競技してる人が見えて、途中階から見ると広がりが見えるのが売りだったわけです。これでコンペに勝ったんですね。その小学校に敷地なんですが、小学校はなかなか中を見せてくれないですし、公開コンペだったから結局コンペ中は見せてくれなかった。だから学校の中を知らなくて設計しているわけですよね。コンペに勝ってから案内されて初めて入ったんです。そしたら校庭の真ん中に、4本すごい巨大なイチョウの木があった。校舎より高いじゃないですか。このイチョウの木は絶対この小学校を卒業した子達の思い出ですよね。これは切れないでしょ、残しましょうよって言ったんですよね。校舎は壊すことになっていて、でも木は残こすことにしました。事務所に帰って何処にあるのかなと思ってみたら、なんとエントランスホールの下にあるんですよね。それであの気に入ってたエントランスホールをやめて、もう一回、やり直すことになりました。考えの中では園芸の場所をつくろうと思っていて、でもこれも役所から辞めてくれって言われたんですね。地域住民同士の喧嘩に発展しやすいので辞めるようにと。 |