手塚:セブ島のプロジェクトをやってる間は、ゴダイゴのビューティフルネイムってわかります?あれがずっと鳴り続けてて、子供たちが、わあーっとたかってくるんですよね。ほんとにね、映画みたい。わあああーってこう集まってくるのよ。黒柳徹子がなんで仕事をしてるのかってよくわかりましたね。
芦澤:うーん、ふふふ。
手塚:あれね、あの楽しいんですよ。生きてよかったなあと思いますよね。それが原点ですね。つくることによって、例えば十日町でもついこの間オープニングがあって、たくさん人が集まって、「子ども連れて行って楽しかったです」みたいなのが、すっごい楽しいですよね。もうとにかく友達出来たら楽しくてしょうがない。それ、その一点に尽きます。
芦澤:なるほどなるほど。建築で皆をハッピーにできればいいんだっていうようなそういう感じですか。
手塚:そうそうそう。大事なことはね、その時にどういうような仕掛けをするかってのが大事でね。
平沼:うん、うん。
手塚:世の中には色んな人がいて、一つはね、砂漠の中で旗を持って行ってここに水があるんだってこう旗を立てる人がいるわけですよ。これは先ほどちょっとお話したIOPの永田さんとか、チャイルド・ケモ・ハウスの一番最初の旗を立てた人がいてね、色んな話をする人がいてね、それから田村さんって人が居たんですけれども、その後どうやって水を汲み出したらいいかとか、どうやって水を流さないで大事にできるかってわかんない時に、「わかりました。後は何とかしますから」ってつくると。
芦澤:なるほど、なるほど。
手塚:で、佐藤可士和氏もね、「私の仕事は、世の中の霧を晴らすことだ」と。「世の中に真実の仕事を見せる事、真実の姿を見せる事だ」と。その通りだと。彼がいないと、仕事って動かないんですよ。世の中って本当はこうあるべきでしょっていう。だけど問題は、霧は晴れてみると実はもうめちゃくちゃな状態な訳です。
芦澤:ははは。
手塚:可士和さんがいいプロデュース料をもらっている時に、小さい少ない設計料でものを集めて建物をつくる我々の仕事は割りに合わないなと思うんですけどね。
芦澤:ふふふ。ははは。
平沼:何に影響を受けてましたか。
手塚:何に影響受けてきたかって…ひとつはね、ピアノがすごい好きで。最近私レッスン受けてるんですね。ショパンの幻想即興曲をもう一回ちゃんと弾けるようになろうと思って、ピアノの先生に子どもたちと一緒に通っていて、
平沼:へええ!
手塚:ショパンの曲ってめちゃくちゃ美しいと思う。ちょっとお題と外れると思うんですけども、こういう建築って作れないかなって、めちゃくちゃ思いますけど、なかなか音楽の力には敵わない。
芦澤:うーん。
手塚:あの、それが、それがなんか一つの大きな影響ですね。
平沼:なるほどね。
手塚:それから私あの、割と涙もろくてですね、最近だと、「風に立つライオン」ていう、さだまさしの書いた小説を基にした、アフリカにいた医師の話があって。その主人公の医師は死んじゃうんですけれども、実は、モデルになった医師は年とってちゃんと生きてるんですけどね。さだまさしは殺しちゃったんですよね。
平沼:ははは。
手塚:その映画に柄にもなく感動して、飛行機の中で見ながらぼろぼろ泣いて、どうしようかって。ああいうものの影響って大きいですよね。ああ、こういうとこで次何できるんだろうって。
実は今ね、ジンバブエの仕事が来ていて、教育環境をどうしようかと。結構ね、ほんとに極地。ジンバブエと、それからサハ共和国ってマイナス69℃まで下がる所があって、そんな話とか来ていて。そういう所から仕事が来ると、ブルッと、よしやろうかって気になるんですよね。
平沼:すごいなあ。
手塚:ただ正直逃げ回るんですけどね。
芦澤:ふふ、ふふ。
平沼:設計していてどんな事に問題だと感じますか。
手塚:ああ。問題っていうのは一杯ありますよね。うちの所員もよく間違えるんですよね。それでどうしようかなとかね。私もいろいろ間違えるんですけども、ただね、問題っていうよりも、それはもう当たり前のもんだと思った方がいいですよね。
平沼:なるほどね。
手塚:学生に言うんですけども、建築ってやっぱり大変だと思うと。サッカーみたいなもんだよって言って、ゴールしようと思うと、タックルかけたり色んなことするやつがいるわけですよ。それをどんどん交わしながら、シュートできるかどうかってしぶとさが建築家って大事で、逆にそれがあるから面白いんですよね。建築で何が大変かって、どういうのが困るかって言われても、もう困る事だらけですよね。
芦澤:うーん。
手塚:突然クビになってみたりね。
芦澤:はははは。
平沼:ふはははは。 |