手塚:これはキッズテラスっていって。蛍がだんだん建物に近づいていくというような感じにしたかった。建物の光の塊。建物の塊と光の塊をちょっとずらしたんですよね。だから木にもつけてる。これが最近できて、これは今年の新建築に出てますね。これはマーケットをテーマにしていて。この「ふじようちえん」って英語を教えてるんですよね。英語教室も、それぞれの先生の部屋が、お店みたいに違うキャラクターがあったらいいねっていうことで。マーケットだったら全部外から入るんだっていうことで、中に廊下がないんですよね。全部外を巡りながら入る。それだけだとつまんないので、外にいっぱい作物をぶらさげちゃおうっていうことで、うちの学生と一緒にやってるんですけども、周りをびっちり色んなもので埋めることにしました。建物を見えなくしちゃおうっていう。「ふじようちえん」で採ったものをぶらさげてるんですよね。たまねぎとか、とにかく干しちゃう。だから、いわゆる日除けがいらない。色んなものぶら下げようと思ったら、最初は作物がまだなかったから、しょうがないから子供を先にぶらさげました。はい。

平沼:凄い。面白いですね。どうですか芦澤さん。

芦澤:子供のための施設をやるっていうのは、手塚さんにとって、自分の想像力を解放するようなところがあるんでしょうかね?

手塚:いや、別に子供の施設だけやりたいわけじゃなくて、他の仕事がなかなか来ないだけですよ。空港とかあったらすぐやりたいですけど。なかなか大人の施設ってこないですね。お年寄りとかいっぱいくるんですよね。面白いのがね、家族をみながら話をしてると、その仕事がくるってところがあって、子供が保育園に通っていると幼稚園の話が来て、小学校に通っていると小学校らしい仕事が来て、それから、うちの親父が病気になって、寝たきりになったらホスピスの話がきて。死んじゃったらお墓の話が来て。で、今うちの親父の墓の設計してるんですよね。納骨堂の設計。なんか全部一貫してこう家族を中心に回っているという。だから、うちの娘が結婚すると、結婚式場の設計するのかなと思うんですけど。

芦澤:それはなんかこう家族営業みたいなことをされてるとかそうゆうわけじゃないんですか。

手塚:そうそうそう。三ちゃん、四ちゃん経営みたいな。

平沼:ははは。本当ですか? 今のね、「ふじようちえん」でつくられた、作物をぶらさげるとか、建築って形態から入っていって、まずそのボリュームから入ってって、プログラムから入っていって、何かの形を表現する職業でもあるじゃないですか。そうやって学んできて、でも隠しちゃうわけじゃないですか。どんな建築空間をつくりたいと目指されてます?

手塚:なかなかね、どんな建築空間をつくりたいと思ってもなかなかそんな仕事こないんですよね。だいたい最初お客さんから電話がかかってきて「設計してもらえますか。」って言ったら「あー分かりました。やらせていただきます。」って一生懸命話してるうちにそういった形が出てくるんで…私は三角の建築つくりたいから三角の仕事がくるかって、ないですよね。ただ大事なのはやっぱり、どんな建築空間ってよりも、どういう場をつくりたいかって。つくって良かったと思える建物がいいですよね。で、この辺は今月末発売する「建築カタログ3」があるので是非ともお買い上げ下さい。今度は50作品といっぱい文章を書いたのですごい重たいです。

平沼:あーなるほど。じゃあ後半戦。

手塚:はい。今回は、できるだけ大阪らしい掛け合いにしようってことで、サラサラとスライド流していくんですけど許してくださいね。
これは、カナダのね、紀子マッカダムさんっていう。

芦澤:あーはい、素晴らしい。

手塚:そうゆいう方が編んでいるアート作品があって。この作品が非常に有名になったと。これ40年前の網なんですね。その当時、鹿内さんかな、箱根彫刻の森の館長さんが、すごいいい目をしてたと思うんですよ。呼んで、これをつくったんですよね。その箱が良くなかったんですね。気がついてみたらこんな箱の中にこれが入ってる、あのすごい有名な方の作品なのに。ちなみにちょっと余計な話をすると、うちの親父にですね、「こういう箱の中にこういうアート作品が入ってて、今度俺この箱を作り直すんだ」って言ったら、「あーすぐ作り直したほうがいいよ。」って。で、書類を見てみたら、確認申請の判子がうちの親父の判子で。

平沼:はははは。

手塚:うちの親父は、俺の設計じゃないよって言ってましたけど。鹿島ネタはたくさんあるんですよね。鹿島建設で育ったみたいな人間ですから。
問題なのは、この場所が国定公園かな国立公園かな、とにかく建物をつくっちゃいけないんですよ。基本は斜めの屋根、もしくは彫刻しか置けなくて、特別な許可を得なくちゃいけなかったんで、環境省の所管のところに行って許可を貰わなくちゃいけない。なかなか難しい。それでね、こうゆう可愛い模型をつくったんですよね。これね、私の手のかたちをそのままぐちゃっとつくって、これを持って、まずその当時の上野館長さんにお見せしたら、「あーいいじゃないですか。」って。「金物使わずに木組みだけでやるんです、日本の伝統を考えます」って言ったら「あーいいねー」って、環境省行ったら、「うんーいいですねー」って。長さ4cmくらいの模型なんですけども、最後まで、これが1000分の1だって言えなくて。

会場:はははは。

手塚:構造の今川さんがこの研究をなさってるので、こういう古い木組がどうなってるかっていうのを勉強して、これを木で組んで、こうやって楔でやるんです、みたいな話しをして。この形って簡単なようで難しいんですよ。積むだけで、引っ張りとか一切使わずやるって難しいんですよ。MITの構造の先生は、これはバックミンスター・フラー以来のすごい構造だって言ってますけど。今川さんもそう思ってます。ふふ、ふふふ。

平沼:あーはい。はは。

手塚:模型をつくって、できてみると大きいんですよ。あんまり可愛くないですね。これの大事なことはね、1本1本の断面が全部違うんですよね。最適化、Evolutionary Structural Optimizationってゆうのかな。名古屋大学の先生で有名な方がおられますけども、それをちょっとマニュアル的にやってるやつなんですけども。要は、過不足なく全部の断面ができてるんです。これは実は、たくさん断面があるんです。大事なのは、過去と未来の融合、最先端の構造技術で分析しながら過去の技術を使うみたいな。
できてみると、林の形はしていないけれども、林のような空間ができてくるんじゃないかって。598本かな、木が使われてるんですね。一番長いのは15mくらい、大きな断面は60cm角位あります。さすがに無垢はないので集成材になっちゃうんですけど。
以前は1日の入場者が100人に満たなかったのが、今は天気がいい時はだいたい1日5,000人入ってます。だからなかなか入れない状況が続いてます。

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