平沼:木造への興味っていつぐらいから持たれましたか?

手塚:さっき見せた箱根からですね。やっぱ木って面白いな、生きてるんですよね。生モノを扱うのが楽しいのを知ったという。こういうのを私たちがやってるって聞いたらね、手塚は木(もく)の専門なんじゃないかって勘違いする人がいっぱいいて。

芦澤:ははは。

手塚:木の仕事がくるようになっちゃって、今すごい沢山やってますね。

芦澤:前の話で出てたんですけど、大学の研究室の活動と事務所の活動と、その辺の連携ってどうされてるのかなって。

手塚:えっとね、学生にやらせて失敗すると大変なことになっちゃうので1件建てるって難しいんですけれども、結構参加させるようにしてますね。そうするとね、いろいろ覚えるんですよ。今回面白かったのは富山湾の氷見っていうところ。漁業の文化を紹介する施設を学生とやったんですね、1億何千万かな、研究室のプロジェクトだとなかなかいいと思うんですよ。そこでやったのは展示施設なんだけど、学生がリアカーで物を集めて回って、それを並べていわゆる蚤の市みたいな展示にする。そういうプロジェクト。私のFacebookみてください。それを通して学生が1年位でものすごい伸びましたね。うちの学生、大学院生すっごい使えますので、雇ってやってください。
すごいですよ。やっぱり実物をやらせると、たくさん物を覚えますよね。

平沼:個性って何ですかね? 個性豊かですけど。

手塚:みんな個性あるんじゃないすか? みんな違うのに同じにしようとしてるのが日本の教育だと思うんですよ。

平沼:なるほど。

手塚:よく言うのはね、海外の講演会でどうやったら国際的になれるんですかって話をされて、ただ“Being local introduce being international”って言うんですけど。要は、ローカルであるほど国際的に必要なものになるって。人間って100%誰も同じ、100%みんな違う。1人として同じ人間じゃなくて、双子でさえも違っていて、自分が何かってのを見出すと、世の中の役に立つものになるんじゃないかって話をよくしてますね。だから個性って、皆何も言わなくたってあります。お二方はすごい個性の塊じゃないですか。

芦澤:いえいえ…はは。

平沼:まぁねー芦澤さんはねー。

手塚:これは、チャイルド・ケモ・ハウスっていう、今日来てるかな? ある方のプロジェクトの最初にやったワークショップの写真ですね。普通はこういうところで、小児ガンの子供を抱えているご家族は過ごすんですね。小児ガンになると、薬でガン細胞を殺すんですけど、そのとき白血球も一緒に殺しちゃうんですね。そうすると、感染しやすくなるので隔離病棟に入る。そこにお母さんが必ずくっついていくんですよ。場合によってお父さんの場合もあるでしょうけれども。ところが、本当は法的に行っちゃいけないんですね。そうすると、この床に六ヶ月間寝続けるんですよ。そうすると体壊しちゃうんです。これをなんとかしたいってプロジェクトです。
それぞれ一軒ずつ家をプレゼントすれば、家族といつでも会えるじゃないか。それはダメですよ、外のこの赤い線のとこ歩いてったら、ここんとこで感染しちゃうんじゃない。じゃあ、くっつければいいんじゃない。そうするとね、ベッド数が足りない。じゃあ、こういうふうにしたらいいだろうという話で、暮らすスタジオにして。実は、5軒ずつを一緒にすると皆仲良くするそう。この青いところが病院ですね。この周りのところがいわゆる個室なんです。ここが家になってると。それぞれのところに、外に対する扉と内に対する扉があって、それを混合すると実質的に完全に隔離している期間が三分の一ぐらいになると。三分の二ぐらいは中にいるんだけど、社会と接する生活ができる。家族は分断されない。だから、経済的に楽になると。これをNPO法人がやって、もう9年目かな。できるまで7年かかったんですけど。こういうプランができて、こういうふうに、こう、それぞれの、今まで最初のベッドの空間全然違いますね。お母さんもちゃんと自分のベッドがあって。
これは今まで保健行政じゃできなかったんですが、ようやくこの7月から。本当に大変だったんですよ。8年目にして、ようやくこれが認可されることになったんですよ。だから、これからです。
なんか、なんかね。で、後はなんか、こう、今やってる、いままで、最近やった仕事…これ全部新建築に出たんで知ってると思うんですけれども、これは教会ですね。ランバー、下地材ですね。細いと節があるとこだけ捨てたりできるんですよね。間引いたりしながら、やっていくと。そうすると、こういう感じができて。これは、壁を張っている大工さんが、俺のライフワークだって言って離さなくて、ちっとも仕事が終わらなくて困ったんですけれども、これ二万本貼って。音響にすごい気をつけてます。この真ん中に立ってるのはPeter Cookさんです。牧師さんのふりをしてくれました。壁がこんな感じになってて、これは音のためにですね。高い材料使わなくても、木でこれだけ雰囲気ができる。本当は言いたいこといっぱいあるんですけれども。で、これは実は担当者の夫婦で。うちってすごいんですよ、今までで社内結婚が6組。よく、結婚相談所じゃないか言われるんですけど。このときもですね、夫婦で結婚、ここで結婚式を挙げるということで、工期通り終わらさねえと、結婚式やらしてやらないからなっていったら、一生懸命やりましたね。

芦澤:ははは。

手塚:これはミサの状態。これは夜。夜は暗くて、そこにいる人たちが光るとそれが本来の姿でしょうと。
これは北九州の教会ですね。色んな人が入りやすい軒のある教会にしよう。ホームレス支援をやっている教会なんですね。低みに下るというヨルダン川ってあって、世界で一番低いとこにある川なので、下がるのは本当だということで、ここに、こう下がって洗礼するんですね。これは軒の空間のところですね。

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