芦澤:どのくらいの広さがありますか?

鈴野:100uくらいです。あっでも今日、平沼さんの事務所に行かせてもらったら、すごく広くて、綺麗にされていてびっくりしました。僕たちの事務所は模型をつくるとすぐに手狭になってしまうのです。(笑)

平沼:いやいや、大阪は東京の家賃に比べて、1/3ほどですかね。(笑)建物が古ければ、尚更ですしね。

鈴野:(笑)いいですよね。
つぎは、東京の表参道ヒルズのパスザバトンという所で、展覧会をしてほしいと言われた時に、たくさんのサンプルやモックアップ、形になる一個前のプロダクトとかがいっぱいあるので、それを全部ガレージセールとして出してしまうという計画です。

芦澤:売るわけですか。

鈴野:そうなんです。500円のくじ引きにして、番号が出たら、確実に持って帰ってもらいます。

平沼:アハハ、面白い。カッシーナさんもそんな事やったらいいのになぁ。何でも持って帰ります。(笑)

芦澤:欲しい物ばかり。(笑)

鈴野:これが先ほどの事務所名の由来で話していました、僕たちの最初のプロジェクトで、ホテルクラスカという30年くらい前に出来たニュー目黒というホテルですが「お化けホテル」とも言われていました。それは、営業していても閉ざされているロビーも暗くて、客室の窓だけが偶に明るいものですから、周りからお化けホテルと言われているような施設でした。
僕の記憶にもあるのですが、本当にボロボロのホテルで、ここにベッドがあるくらいの小さな部屋です。この時考えていたのが、こんな小さな部屋だと物が宿泊者や空間へ与える影響が大きいので、物を全部出してしまって、物から空間を考えていくという発想に変えました。そしてそれをどう整理していくかという事なのかなと思い、椅子まで半分くらい入っていて、それを引き出したりとかにしました。逆に言えば、椅子が決まらないとこの壁が決まらないです。この写真に写っているのが、禿ですね。

平沼:若い時ですか?

鈴野:はい、そうですね。約10年前です。

芦澤:そういえば僕、一度見せてもらったことがあるのです。違ったタイプの部屋に泊まらせてもらったのですが、いろんな部屋を見学させていただきました中に、鈴野さんの設計された部屋も見させていただきました。

鈴野:そうでしたか。ありがとうございます。(笑)
この壁面の穴は、レーザーカットで、四角く穴をあけたり、丸くあけたりする感じでつくりました。このドライヤーから風がでているようなところは、実はスピーカーが入っています。リノベーション前のこの写真で見ると結構、広く見えるのですが18uしかなかったのです。まぁ、そこが僕らの初めての敷地だったというか、最初につくった空間です。建築とかインテリアの仕事かという分別は無くて、その前に勤めていた設計事務所、シーラカンスの時であったり、その後はオーストラリアの設計事務所だったんですけど、建築の仕事しかしてないです。でも、そこを敷地として捉えてそんなに違いを感じがなかったのです。むしろこれを建築としてつくっていると思っていました。今から考えると、インテリアの範囲ですけども、これをレーザーカットで切るという事で具体的な形を与える事に実は恐怖を感じていました。僕らの学生時代は、ポストモダンの後なんで、その形にどういう意味があるのかとか、それから、都市にどういう効果を与えるとか、泣かされるまでやった経験でそう感じていました。

一同:(大笑)

鈴野:平沼さんや芦澤さんは、そんなことなかったですか? ただこれをやれて、人に与える効果がある、そういう物に想いを持たせる事が出来ること。ここで思ったことは、今まで都市計画があって、建築があって、それからインテリア、家具とかプロダクトがあって、人が入って、という上位概念になっている考えが、逆に物から発生していくというところです。結果的に小さいものから、インテリアが出来て、こういう発想もあるんだなと気づかされて、そこから僕らの考え方が結構変わってきたところがあります。そこですごく考えたようなことが、未だにあって、建築と家具の中間的なところとか。

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