平沼:もうひとりぐらいいませんか?
会場2:建物でも、建物じゃなくてもいいのですが、これから設計してみたいものってありますか?
谷尻:やったことがないことをしたいです。自分のやったことないことがないことをやりたいですね。ある種こう、不安であり続けたいなと思っているんですよね。
会場2:建物じゃないものも、やったことがなかったらやってみたいですか?
谷尻:やってみたいと思います。でも何をつくるときも、自然と建築的な思考で、やっぱりこう、そこに臨んでいると思うので。ついついアプローチとか考え方は結果建築的なものになっていると思いますよね。
平沼:このショウルームの方から人伝えで聞いたのですが、谷尻さんはさみしがり屋さんですか?
谷尻:僕めっちゃさみしがり屋です。一人で映画とか見に行ったことないですもん。
芦澤:人とコミュニケートするのが好きですよね?安心する?
谷尻:はい。
平沼:なるほど。最後にもうひとりぐらいいかがですか?
芦澤:じゃ、ひとり黙々なんか作業することっていうことも好きじゃない?割とスタッフとわいわいとやれる方がいい?
谷尻:これが良いと思う?思う?ってもう、話しかけてやります。ひとりだと、なんか自分が考えたことで自分の思った通りのものが形に出るじゃないですか。そうするとなんかこうつまんないんですよね。なんか予想通りなので。なんか予期しないことを自分でこう起こすためにわざと自分にノイズを入れるというか。違う人の意見をどんどんインプットして、自分の中で化学反応を起こさせて、それが外に出ていくほうがいいなと思っているので、
そういう意味では、わざと混沌状態にするというか。追い込まれるようにするだとか。そういうやり方をしているかもしれないです。
芦澤:そういう意味でのセルフコントロールはなんかうまくやってそうだね。
谷尻:そうですね。だからコンペの時間がない時とかがすごく良いですよね。あーもう、やばいやばいっていう中でやる感じが。
平沼:それは追われた方が走るタイプ?
谷尻:はい。走ります。基本根が不真面目なので。追い込まれて、なんかいろいろ課されてないと、ちゃんとやらないです。
平沼:質問まだありますか?
会場3:お話ありがとうございました。この春に大阪駅前にできた商業施設で働いているものですが、後半の方に、キャンベラの商業施設の話あったと思います。ものが買える場所、人が住む場所っていうところをつくるときに、その場が長年愛されるためにその建築という観点で、大事にしていることってありますか?
谷尻:余計なことをしないことですかね。なんかデザインするっていうと、これがあった方がかっこいいんじゃないか?とかそういうことなりがちだと思うんですけど、それが一番、うっとおしいものになりがちなので、余計なことをなるべくできるだけしないように、ものをつくりたいなとは思いますね。
会場3:それはその場に出てくる人たちを盛り上げるためには、あえて何もしないという感じですか?
谷尻:そうですね。手数を少なくしたいなと思っていますね。人が空間をつくると思うんですよね。だから最終的には建築の相談をされても、どちらかというとソフトな話で返すことが多いですし。普通建物で解決しようとするじゃないですか、割と。でもそれを使う人がいないと全く機能しないので、やっぱりコトからモノを考えたいですよね。
会場3:ありがとうございます。
平沼:谷尻さんは前回来てくれた石上さんと同じ年ですよね。石上さんが来られて、石上さんの建築への取り組み方って、多分ひとつの事をすごく深いところまで追求していくタイプ。彼はノーマルだと自身で仰っていましたけど、いい意味で変態ですよね。(笑)すんごいところまでいって、ふっと戻ってこれるくらいの才能を持っているように感じました。谷尻さんはすごい、うわーっとこう広いとこに広がっていくタイプのように感じました。蛇口をあけて水を出したら、シンクの中に水がうわーって水が広がっていって、それが水を止めたらふっと無くなっていくじゃないですか、水が。そんな水のような人だなって今日、あらためて僕は思って聞いていたのです。
芦澤:僕、今わからなかったな。(笑)
平沼:(笑)わかりづらいですね。 僕らの世代っていろんな人がいるっていわれるじゃないですか。やっていることが、バラバラというのか、ひとつ上の世代と比較して、おなじようなことをやっている人たちが集まっているような感じもあって、例えば、同じ世代の藤本さんでもいいし、石上さんでもいいですけど、気になりませんか?
谷尻:昔は気になっていました。どちらかというと、あらゆるものが気になっていましたし、
もう他に情報がなかったので、もう穴があくほど建築雑誌をみるしかなかったというか。知り合いもいないし、建築家の友人もいなかったのですし。手段がなかったっていうね、だからすごくすべてを気にしていたんですけど最近はあまり気にならなくなりました。
平沼:なるほど。それは良い意味で?悪い意味で?興味がなくなってきたっていうこと?
谷尻:興味はあるんですけど、やっぱり以前は、人のものさしで自分をはかっていたと思うんですよね。でも今は自分のものさしで自分をはかればいいんだなって思えるようになったので。興味はあるんですけど、左右されなくていいっていう意思は持てた感じです。人がどう言うかっていうことよりも、自分がどう考えて何をやるかのほうがやはり大事だなと思って。
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