平沼:事務所にはそんなやりとりをするスタッフが何人いらしているのですか?

谷尻:今、24名です。

芦澤:じゃぁ、フラットにそのスタッフ24人と、フラットな関係で和気あいあいというか、言い合えるような関係性は作れている?

谷尻:それは作れていると思います。はい。

平沼:谷尻さんは、現代社会における建築家の役割をどのようにお考えでしょうか?
建築という職能をどのように考えているかっていうところにも触れてお聞かせください。

谷尻:みなさんもきっとそうだと思うのですが、建築家って実は建築以外のことも話せたりするじゃないですか。いろんなことをアドバイスできる建築家が、もう少しきちんと、社会に認められたらいいなと思っています。ものづくりをすること以前に、やっぱり思考が深いのですね、みなさん。周辺環境を読み取る力もありますし、リサーチすることも、それを形にすることも、表現していくことも、プレゼンすることも、一貫してやっている職業なので、多分きっと違う領域になっても同じようにできる素質がみなさんお持ちだと思いますし、僕もそういうことができたらいいな、と想います。

平沼:このレクチュアシリーズは毎回、登壇していただく建築家の方からプロジェクトのスライドをみせていただいて、芦澤さんだったり僕だったりが質問を事前にいれていくのですが、僕はこの質問を谷尻さんに一番聞きたかったのです。
それは谷尻誠という建築家を、どのように歴史の中で位置づけられていますか?

谷尻:これは、人としてってことですよね?

平沼:はい。建築家としてです。

谷尻:建築家としてはせっかく今までの先輩方が、ある種良い意味でも悪い意味でも、建築家の地位を確立してきたと思っています。それはある意味良い部分でもあるのですが、ダメな部分でもあるのが近寄りがたくなっているという現状もあると思うのです。そういう凝り固まってしまった部分がやっぱり世の中の感覚としてあるので、僕はなんかそれを溶かす役割できたらなと今は思ってやっています。

芦澤:歴史的にこうなんか一番参考、参照されている建築家っていますか?谷尻さんの中で。

谷尻:いないです。だけどある意味、皆さんを見ている感じですかね。この人あんな感じ、あの人あんな感じなんだなっていうのを見ています。

谷尻:これは、最近、もうすぐ、これも着工するプロジェクトをいくつか持ってきました。さっきいの展望台で負けちゃったコンペですけど、あれがきちんと活かされて、透明な家というものをエキスパンドメタルというのと、周囲のアクリルで構造を取っていて、柱の無い住宅が丁度着工したばっかりですねこれは。

芦澤:柱っぽいのは塗料?

谷尻:あれは建具の枠です。

平沼:なるほど。谷尻さんの住宅は、実験なのですか?

芦澤:全部実験じゃないの?

谷尻:ずっと、実験し続けているというか、そういう言葉があれなのかもしれないですが、でも新しいものを作る必要はあるなと思っています。

芦澤:そういう時の、新しいことにこうチャレンジする時のこう、リスクは伴うこともあるじゃないですか。それは全然怖くないですか?

谷尻:自分か抱えきれるリスクしか起きないじゃないですか。多分、自分で抱えきれないリスクはきっと作れないのかな、と。

芦澤:それやっちゃったらプロじゃないですもんね。

谷尻:はい。だから、なにか起きても向き合えるリスクなんじゃないかなって思いながらやっていますけどね。そんなにすごく大変なことが起きるのも、結構難しくないですか?

芦澤:難しいよね。実際地震が来たら、倒れるとか?

谷尻:倒れて困るのは僕らなので、だから誰よりも慎重にやっぱりやりますね。

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