芦澤:平沼さんも昔すごくコンペをやっておられていましたよね。

谷尻:そう、すごくやられていましたよね。

平沼:やっていましたね。(笑)

芦澤:最近何でやっていないの?(笑)

平沼:最近、少しだけ利口になってきたんじゃないですかね?

芦澤、谷尻:(笑)

谷尻:数をやってもダメだっていうことですか?

平沼:僕、何個くらいやりましたっけね? 30、300? いやきっと10年間くらいで500くらいの提案をひたすらやってみたのです。そして500くらいを超えるとやっとわかってくることもあって、でも僕はダメですよね。それくらいやらないと一巡して何が提案になって、何を求められているのかわからなかった。そしてあまりにも負け続け、みんなからお前、日本一コンペが弱いな、と言われはじめてそっか。ときづいて。(笑) それからそれらの提案を2年くらいかけてリサーチしていくにしました。でも、その検証のあり方にもマニアっくさが入ってしまうから本当だかどうかわかりませんが、僕が落ちて通った案のことも含め、並列に並べて検証していくと、どういうことすれば勝てるのかっていうの部分も同時に見えてくるのです。不本意なことも含めてです。
属にいわれるコンペの打率換算ってあるのだとすれば、例えばコンペ提案500分の何個通ったかみたいなことも同時に見えてきて、その理由と割合を計算していくとですね。(笑)その要はとれた理由ととれなかった理由を相対的に書いていくと・・・。

谷尻:取れる理由になるのですか?すごい。教えてほしいですよね。

芦澤:もう取れるってことでしょ。取れるための作品は作りたくないというのがきっと本意なんですよね。

平沼:もちろん審査員という人が選考をされるので、必ずなんて一概にはいえないのですが、できるだけ可能で高い確率でとるためには、とるためだけにあるその提案が必要だってことも見えてくるのも本当なのかもしれませんね。僕はそんなことをしないと感覚ではとれなかった才能で、そう考えると谷尻さんは無作為にやっているような感覚があって、純粋で素直にやられているじゃないですか。この自由な状況がやっぱり面白いですよね。

芦澤:え、そうですか。僕もぜんぜん取れないですよ。

谷尻:取れないですよね?

芦澤:全然取れない。特にOPENコンペは。一回取っただけですよ。

平沼:こないだ石上さんなんか勝手に出して勝手に取っていたじゃない?

芦澤:そう、そう、ロシアのものすごくゴッツイ美術館のやつ。

平沼:あれもOPENって言ってましたもんね。

谷尻:あぁいうのを見ると何かをやらなきゃなって思いますもんね。
これはオーストラリアのキャンベラで工事中のものですね。集合住宅と、officeと商業のcomplexのものですね。

芦澤:大きいですか?規模は?

谷尻:大きいですね。5万uくらい。むこうの日建設計みたいな人と一緒にやっているので安心ですよね。僕だけだと不安です。

平沼:谷尻さんは、建築において様々な技術をどのように取り込もうとされていますか?谷尻さんの場合コンペでの提案が住宅案に変わっていったり、いろいろアイディアが実現されていくような素質をもたれれていて、なんだかアイディアを諦めず作られているようなのが多いな、と僕、スライド見ていて思ったのです。

谷尻:技術…か。そう意味でしたら、結構割と違うものも見ていますし、土木的技術のこともありますし、違うジャンルのことにすごく興味を持っているっていうのがあるのと、あとコンペ案は負けたと思ってないです、僕。あの、そこの評価では、残れなかったとしても結構他で使えるんだと思うのですよね。例えば、こうプレゼンをするときに1度企業さんから面接でプロジェクトを誰と組むか決めるというものがあって、実績をパワーポイントで1時間プレゼンして欲しいと言われたんですよ。で、実績がないので、散々悩んだ挙句、実績をプレゼンしないことにしたんです。もう、これは賭けにでようと思って。住宅の実績出しても大きいプロジェクトに対して何にも響かないと思ったのでコンペ案だけを1時間つらつらと、どういう思考でどういう考え方でどういう建物が作れるかということを僕はプレゼンしました。要は大きい会社と一緒に組んでやる仕事なので、あなたたちにないものを僕は持っているのだから、僕と組むメリットっていうのはそこなので、そこで評価してください、ということでコンペ案だけをつらつらとやって選ばれました。だからもうただでは終わらないつもりでやっていますけどね。

芦澤:しぶといですね。

谷尻:そうですね。でもそういうとこありますよね。

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