平沼:これNYプロジェクトですね。
谷尻:これはですね、初めて海外から依頼が来てものです。すごいお金持ちの方で住宅を大胆に作ってくれって言われたのです。大胆に作ろうと思ってこう、敷地に岩がばらまかれているような。岩の中が、居室になっていて、岩と岩との間がリビングとかになるような。
平沼:(笑)大胆だな。
谷尻:(笑)こういう思いっきり大胆に、この際だから大胆に出そうと思って提案したら、大胆すぎるって言って断られました。
平沼:谷尻さんはアプローチへのやり方が、今までのゲストの方とちょっと違う視点ではじめているじゃないですか。どうですか?
芦澤:そうですね。柔らかいですよね。非常に。日常のちょっとしたこう認識のずれとか、あんまり、堅苦しくないというか、いわゆる建築的なアプローチとは違いますよね。
平沼:そうですよね。すごい脇を甘くしているなぁという感じがあります。きっと懐が深いのですね。
谷尻:(笑)そうだといいですけど・・・。
平沼:ちょっと谷尻さん質問させてください。建築家としてご自身の個性はどんなところにあると考えていますか?
谷尻:目指したいところは、あまりその個性が、一つの方向性に偏らないような多様性であることが作家性になり得るんじゃないかってことを考えています。頼まれる人も環境も、コストもあらゆる条件が違うので、常に式が違う場合やはりこう答えが、毎回、ディベロップされるべきじゃないかなと思っているので。出来るだけ、その状況の中で答えを見つけられるようにと。作家性って、なんか1つの方向性を持つことのように感じられがちだと思うんですけど谷尻:多様であることも作家性と呼べるものってあるんじゃないかなっていうようなことを思いながらやっています。
芦澤:その多様さの中にこう枠っていうのはあんまりないってことですかね。いろんな方向性、出るよね。
谷尻:癖が出ますよね。結果、やっぱり自分という脳みそのフィルターがかかるので、どうしても癖が出ると思うんですけど、出来るだけ、インプットして、自分の中だけの出来事だけで物を作らないようにしたいなと思っています。
平沼:もう一つ質問をさせてください。なぜ地元の広島と東京に拠点を置かれているのですか?
谷尻:えっと以前、プリズミックギャラリーって東京にあるじゃないですか。建築の展覧会を毎月やっている。あそこで展覧会をやったときに、東京事務所がなかったので、東京事務所っていうエキシビションをしたんですよ。そのギャラリーになんか模型とか作品飾るよりも自分たちの仕事場を展示しようと思って、事務所をそこに作ったんですよね。会期の間。そしていざ終わってその家具引き取る場所も実はなくてですね、この際だから同じぐらいの広さの事務所東京に作ってしまうかというので、東京の仕事も少しずつ増え始めていたので、その勢いでつくりました。
平沼:その後、ヒカリエにもなかったですか?
谷尻:あれはイベント的な形で一カ月だけ間借りをして事務所をやりました。
芦澤:東京事務所、何坪ぐらいあるんですか?
谷尻:10坪です。
平沼:谷尻さん、なぜ建築をやめないんですか?
谷尻:建築をやっているといろんな人に会えますよね。いろんな職種の人に会っていろんなことが起きるのがとてもおもしろいからなんです。
平沼:でもそれは谷尻さんだけが持っている特権かもしれないな。(笑)
谷尻:でもいろんな職種の人に頼まれますよね。
平沼:クライアントですか?
谷尻:はい。情報を得るときにもいろんな人に聞きますし。割と人好きなのです。料理のことも建築と関係が持てたりとか。音楽のことも、手触りのことも、あらゆる五感に関することをやる職業においては、いろんな人に会ったことがすべて、活かされていく職業なので、そういう意味では楽しいからやっているのです。
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