平沼:質問に戻って、建築とメディアの関わりについてお考えをお聞かせください。

石山:僕は、自分でコンピューターいじらないんですよ。スタッフを間に入れて、手書きの原稿でわざわざ一拍置いてやってもらってんの。今コンピュータってみんな使うじゃないですか、それで、製図ってものがコンピュータに入れ替わってますよね。それとメディアがコンピュータで流れて来るっていうのは、これは一つの大革命なんだよね。コンピュータによる、コミュニケーション。先ほど言ったけど、我々の世代は商業ジャーナリズムで育てられたんだよ。アカデミーじゃないんですよ。商業ジャーナリズムでほどほどに一時期有名になったりして、偉そうなことをまだ言ってる訳だ。でも今はコンピュータだろうな。誰でも書けるし、実に怪しい。不愉快だしね。誹謗中傷すごいですよね。でもやっぱり、あれを掻い潜っていかないとどうしようもないだろうな。あれに敵うメディアがないよ。

平沼:藤森照信さんがここに来られたときに言ってたんですけど、「幻庵」を作られたときに、紙面上の発表がなされなかったって言われてたんですけど、どうしてですかって藤森さんに聞いたら、新しすぎたからって言われてたんです。

石山:藤森あいつ、へたっぴだかんねー。古い層を探ってる人なんだけど、近代建築をよくわかってない。それの良さだよあれは。出江さんの数寄屋とかああいうのは、数寄屋知ってんだよね。藤森は恐らく知らないぞ。歴史家としては知ってんだけど、それの面白さだろうな。それから子供が嬉しがるわな、あいつのは。

平沼:あ、はは。楽しそうですね。

石山:うん、あれはすごいと思う。

平沼:これ、最後の質問で、いつも皆さんに聞いているんですけど、建築家とはどんな職業ですか?

石山:建築家とは、やめられない商売であるけど、やめたいといつも思ってる商売ですね。金が儲かんない。

平沼:なるほど、そんなことを踏まえて若き建築家に一言。

石山:そのために来た。関西が頑張ってくれないと駄目だと思うね。東京になびいてたら、もう芽がないからね。東京はね、アメリカ経由、ヨーロッパになびいてんだから。アメリカだって、西海岸と東海岸と全然違う国なんですよ。西海岸、ロサンゼルスとかカリフォルニアとかクルクルパーですよ。それで、東海岸の方はみんなヨーロッパ向いてんだから、あれはヨーロッパですよ。我々の受けた教育も、ヨーロッパなんだな。しょうがないんだけど、しょうがないって言ってる時代じゃなくなってる。第二次世界大戦で負けてからアメリカが入って来たんだよね。だから若い人ってみんなアメリカ人みたいなもんなんですよ。さっき質問した人なんかアメリカ人気質ですよ。嫌みじゃなくて、ほんとに良いアメリカ人だなって思う。
日本はあんまり好きじゃないんだけど、もうちょっと広範なアジアとか、そういうとこはやっぱりちょっと過小評価され過ぎてるなっていう感じはありますね。
若い建築家へ一言メッセージって言ったら具体的に言ったら、死んでもやめないでくれって言うことね。建築家をやめないでくれって言うのと、金儲けてくれっていうことだな。
僕はね、フィンランドっていう国が好きなんですよ。ナショナルロマンティシズムなんだよね。あそこはドイツとかスウェーデンとか昔のロシアから苛められ抜いてきてるから、健全なナショナリズムが育ったんだよね。日本は健全なナショナリズムが育たないで民主主義になったんだよね。僕はナショナリストじゃない。でも単純なインタナショナリストか、グローバリストでは絶対ない。ちょっと梅干しの種を持ちたいなーと思ってるアジア人くらいのことしか言えないんだけどね。
失礼な言い方になるけど、渡辺豊和さんなんかがやり残したことはやってやろうと思ってる。建築の大事な人達が、豊和さんとか毛綱モン太とか、ああいう人達のやり残したことは、やってみようと思ってるね。僕らの仕事はオリジナルじゃないから、みんな継いでんだよね。出江さんとか、タイプは違うんだけどみんな継いでんだよね。嫌いなやつは継承していきたくないけど、ちょっと好もしいなーと思った年寄りの仕事は、継承していきたいと思ってる。

平沼:今日はどうもありがとうございます。

石山:はい、どうもありがとうございます。

AAF:ありがとうございました。それでは、退場されますので皆様大きな拍手でお送りください。

平沼・芦澤:ありがとうございました。

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