平沼 : 芦澤と平沼に、ひとつ質問をください。

藤本 : あ、僕が聞くんですか?(笑)むずかしいですねえ。芦澤さんと平沼さんが建築を考えるときに何を考えているかということを聞いてみたいですね。

芦澤 : 建築で何ができるかということはよく考えます。たまたま建築をやっていて、いろいろなりたいものはあったんですけど、あんまり恥ずかしくて言えないんですけど、ムエタイの選手とか(笑)。藤本さんが今の世の中での最適解やできることをという話がありましたけど、僕は今の世の中をあまり肯定していなくて、もう少し仕掛けないとだめなんじゃないかなと思っています。例えば人間と生態系をどう調整していくかという課題を考えながら建築を考えています。人間が楽しいのもいいけど、鳥も楽しいければいいなぁとか。その辺からイタチがやってきたらいいなぁとか。そういうことを考える余裕も、実施設計になるとなかなかなくなってくるんですけど。

藤本 : わかります。今の気分を上手く掬い取って建築にしようということではなくて、人類がずっともっている潜在意識が現代という時代にどう湧き上がってくるのか、そのときに、芦澤さんみたいに、人間だけが豊かでもおもしろくないでしょう、という表れ方もあるかもしれませんね。そういう意味では共感できるところがありますね。

芦澤 : それを意識させる意味では、敢えて極端にやってみてもいいんじゃないかな、と。ばかにみえるような建築の表現もあるかなと思いながらも、なかなかクライアントがついてきてくれない、という悩みをもっています。

平沼 : 最後の質問です。建築家とはどんな職業ですか?

藤本 : 今言っていたことですけど、人類が受け継いできたことを未来に伝える、それだけですね。

芦澤 : 人類だけじゃなく、地球の歴史のことを考えています。人類の歴史は、地球環境の一部であって、そのなかで培ってきた何かがあるはずだと思いますですよ。

藤本 : 人類が好きなんですよね。しょぼい部分もあるけど、そういうのも含めて、感動的というか。

AAF : ではここで、会場からの質問を受け付けます。

Victoria : Congratulation the winning your first international competition. The international competition is how national competition in Japan, you know, for me, there is no difference in abroad and domestic. Both is very very important in nerves. What can you tell the Japan is country? What experience do you have international ---?

藤本 : まあ、世界の色いろな場所に行くというのは、面白いですよね。新しい風景、新しい文化、新しい人々、その中で建築を考えると自ずと発想も新しくなる。でも実は日本の中にいても、まだまだ知らない場所だったり、知らない伝統や文化だったり、施主はみんなそれぞれ全く異なる人々だったりする訳で、そういう新しい発見という意味では、実はあまり違いがないのかもしれないですね。ただやっぱり、都市のあり方とか、文化のあり方とか、そういうものの多様な経験をできるという意味で、インターナショナルであることは僕にとってはとても重要な気がしますね。これで質問の答えになっていたでしょうか?

Victoria : Yes, it's fine.

加藤 : 社会と建築が、ヨーロッパではつながっているな、と感じています。事務所でやっていることと社会とがつながっているな、と。日本で建築をやっているとマニアックになりがちだと思うのですが、どうやってオープンにしていくのか、ビジョンがあったら聞かせてください。

藤本 : そうですね、僕の中では、直接働きかけるというよりは、50年後の社会の基盤の価値観をつくっているんだという意識ですね。今の社会システムはいろんな歴史をひきずってできあがっているので、そこに直接働きかけても本当の意味での変革にはならないのではないか、という思いがあるんですよね。たとえ都市がひとつつくれたとしても。ところが、ミースやコルビジェがやったように、価値観の根っこみたいなものを、ある具体的なライフスタイルのかたちにして世に送り出すと、50年後、100年後に、すべての価値観の根底がそこから生まれているというようなことが起こるんじゃないかという風に空想しているんです。僕らが巨大な氷河の上に乗って流されているとしたときに、その氷河の流れを、一番根っこでめっちゃ押している人になりたい。その建物が、直接、今の社会に影響を与えなくても、いずれはみんな俺が押したほうにいっちゃうと。それは、一見社会に背を向けているようにみえるけど、ものすごく社会的な仕事をしているんだと思いたいですね。

平沼 : 伊東さんに、僕たちの世代ってどうですか?と聞いたときに、藤本さんを代表にとにかく面白い、と仰っていました。藤本は、自分が押していると思っているけど、また別の角度から見ている人がいると。たぶん藤本が、自分はここだ、と切り拓いてくるだろうけど、みんながそこに乗っていくわけではないという世代だ、と。すごく楽しみに、期待していると言われていました。

藤本 : 伊東さんは、僕を青森のコンペで引っぱりあげてくれた恩人、建築界の父親のような人です。僕も伊東さんの影響をとても受けていて、建築の一番大切なところを考えなきゃいけないんじゃないかというメッセージを常に発信している方ですよね。でもそういう大事なことって、現実世界の中でやろうとすると、大体負けるんですよね。一番大事なことなんて答えなんてすぐに見つからないですし。でも、負けを覚悟で突っ込んでいこうぜ、ということを、悲壮感なく、穏やかに笑いながらいっているのがかっこいいなと思っていて、そういう人になりたいな、と思います。

平沼 : 今日はありがとうございました。

藤本 : ありがとうございました。

芦澤 : どうもありがとうございました。

| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |