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芦澤: |
では、恒例の、何か僕らにメッセージや質問があればどうぞ。 |
前田: |
今、建築家の仕事をどう拡張していくかといところで、芦澤さんや平沼さんがこういう会をつくって、発信する場をつくられていて、そういう場は10年くらい前はほとんど関西にはなかったわけですから、そこで場をつくられたり、建築の職業を拡張していくことをされているので、いろいろ伺いたいなと思っていました。建築家の仕事じゃないじゃないかもしれませんが、芦澤さんは今、奈良の山を歩き回って、山を買うかという話をしているらしいですね(笑)。背景も含めて教えてもらえませんか。 |
芦澤: |
僕も最初のきっかけはそうなんです。都会生活が息苦しくなってきたので、山で1ヘクタール40万くらいで売っているという噂を聞いて、それだったら買うかと思って探しに行ったんです。そうすると、山がそういう値段で売られていて、買い手がいないということには色んな背景や問題があって、林業の衰退や、過疎化した地域とか、色んな問題が見えてきたんです。
今までは、そういった部分に行政が予算をつけて、コンサル的に設計者なり、コンサル事務所に発注をして、その場所を盛り上げていくということは、従来はやられていたと思うんだけど、結果的にはなかなか成功していないですよね。それをもうすこし自分達が身をもってできるようなやれることがあるんじゃないかな、と考えています。それは、建築というものに多くの比重を置きながら、地域や、産業などを見ながら、今いろいろフィールドワークをしているところです。
一方で、都市は都市で、家賃を10万も払ってずっと住んでいるなんてばからしいな、と思っています。そんな環境しかないのかという中で、例えば住宅をローコストで手に入れることを考え、さっきの話とつながるんだけど、さらに何ヶ所かの拠点で活動しようと考えたときに、ホテル暮らしでもいいんですけど、何戸か家を持つというのもライフスタイルとしては僕はいいとは思ったりしていますよ。
そういうソフトとハードを含めたところでのことは考えたりしています。 |
前田: |
僕も小学校のリノベーションで、小学校を住居に変えるということを提案して、年間維持費が何百万とかかるところで、逆にその予算をつかって耐震性能を上げて変えていけば、こういう住まい方ができるという提案をしているところです。
平沼さんは、自身の展覧会をすることで、いろんな方が建築家の活動を見る機会をつくっていますよね。僕も建築家の展覧会は、安藤さんであったり、ペローの展覧会を見に行って、人生が変わってしまったりしたんですけど(笑)、建築家が展覧会をすることは、ヨーロッパもありますし、日本でもいろんなところでやっていますけど、展覧会でやっていることを建築以外の人に伝えるには、どういう方法がありますか。 |
平沼: |
実はこないだ石上純也さんの建築の展覧会を豊田市美術館まで見に行ったときにちょうど前田さんと偶然に会った中で、一緒の展覧会を見たんですけど、その後石上純也さんに全く同じ質問をしたんです。展覧会をどうやって考えていますか。つまり、展覧会の依頼に対してどういう解答を持っていますか、ということを聞いたんです。そうすると、彼は明快に言っていて、展覧会はひとつの実験なんだと。だから自分がやってきた作品を展示するなんてつまらない。つまり、僕たちは見る側のことを考えてやっている場合ではないんじゃないかということを、ずばり言っていました。このレクチュアはこのまま生でやっているので、そんなことないんですけど、テレビの世界だったり、見せるためにつくられているような、あるいは見る側のことを考えたキュレーターの配置であったり、そんなことってもしかして不必要というか、混じり気があるんじゃないかなということを、彼は純粋に言っていて、とにかく実験をしたい。実験をすることによって失敗をする・・・まぁ実際に失敗していたんですけど、失敗するかもわからないけど、それでいいんじゃないかという解答を言われました。その後に、そういう観点は本当にかっこいいなぁと思ったのと、今までの建築がやってこなかった展覧会のあり方の一つを彼が示してくれたから、それを聞かせてくれたことによって、もちろんそういう見せる側のことも必要なのかもしれないけど、これから僕ら作家が、自分たちのやっていることに純粋に挑戦して、中傷されようがケチョンケチョンに言われようが、やっていく展覧会もいいんじゃないかなっていうふうに、この2週間くらいの間に考えていました。
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