芦澤:
ちなみに富国生命ビルの中で、ここは前田さんが決めた、というような場所ってありますか?
前田:
そうですね。さっきのドローイングでも、ペローと決めていったところはありますけど、コンペのときって結構ペローは任せるんですよ。それで、結構コンペのまま立ち上がっていくところがあるのですが、ただその素材感と言うか、天井の写真は出てきますか?格子の天井のところがあって、現場でできてきたときに、ペローが現場に負担を掛けないで順列をランダムにするよう指示したんですが、あぁすごいなぁと思いました。あと、僕が決めたといえるかと思うのは、これです。これは、すごく小さいことなんですけど、ここの前に建物が建ってた場所なんです。実はここもデザインしても良かった場所で、当時、ここもいわゆるデザインをしようかなぁと思った時期もありました。外装デザインと、低層部のパブリックな場所と、内装デザインを設計していく中で、ここもデザインの対象に入っていて、いろいろ試した挙句、結局もとの大阪市指定の舗装そのままでいこうとうことになりました。当時はこれを持ち上げでベンチにしたり、これをいじったデザインをしようとしていたんですけど、でもそのとき机上でスタディしていたことなんですけど、ランドスケープというか、舗装みたいなものが、できるだけ目立たないで、あ、道広くなったね、空間のデザインってよく分からないけど、ふつうに繋がってるね、というものができればいいなぁって思っていました。実際できてみると、たぶん誰も気付かないようなものなんですけど、これはシンプルになっていることで、広くなった歩道からいきなり建物のガラスが建ち上がってるという、建物の足元のデザインとして設計を行いました。実際にはすごく小さなところですけど。
芦澤:
意外なところだけど、これだけ建物をひいて、外部空間とパブリック空間を一体化することで、都市に対してのゆとりをつくっているというのは、なかなかやれそうでやれることじゃないですよね。特にこんな場所では。
前田:
意識しなくてもこうなっていたかもしれないけど、色んなことを試した挙句、こっちに戻したという判断でしたが、できてみるとおもしろいんじゃないかなと感じています。
芦澤:
なるほど。では、次の作品にいきましょうか。
時間がおしているようなので、端的にいきましょう。これはコンペ案ですか?
前田:
コンペではないですね。これはマドリッドなんですけど、市内に川があって、その川の周辺に、大阪のように高速道路が走っていて、大阪ほどグロテスクじゃないんですけど、その高速道路がものすごく渋滞するので地下に埋めて、そこを公園にしようという計画を、マドリッド市が立てました。そのランドスケープというか、公園計画をヨーロッパ中の建築家を指名して設計競技を行いました。ペロー事務所も、その20人くらいのセレクションの中に入っていて、最終的にラスト3つまで残って、ヘルツォーク事務所とペロー事務所と、最終的にはマドリッドの地元の事務所が勝って、全体計画をしたんです。それで、ラスト3まで残ったおこぼれとしてペロー事務所にはここの歩道橋の仕事が入ってきて、僕はそのコンペを担当していたこともあって、現地に行かせてもらって、クライアントとの話し合いからやらせてもらいました。
芦澤:
時間がないようなので、すみません。端的に一言で言うと、どうでしたか?
前田:
端的に、ですか(笑)。これは橋をつくるという計画だったのですが、橋だからある点とある点を繋ぐことが目的なんですけど、橋という物体ができることで、橋の下という空間が生まれてきます。橋の下って、いつも寂しい場所になってしまうんですけど、橋をつくることでその下もいい場所にしたいという狙いがありました。先ほどの、建築をつくっているんだけど、建築じゃない場所をつくりたいということと共通しているかもしれません。橋は建築じゃないんですけど、場所をつくるという点では同じかと思います。
芦澤:
橋の上も場所だけど、下も場所だという捉え方をしていると。
前田:
そうです。
芦澤:
それは、こういうヴォイドみたいなものを開けている理由ですか?
前田:
そうですね。構造的には、ある三角形をかたちづくって、それが連続していくのですが、構造としては十分おもしろいので、それを丸にしなきゃいけなかったかというと、そうでもないのですが。むしろ、かたちはこういうものじゃなくても良かったかもしれません。
芦澤:
なるほど。
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