平沼:
次にいきます。建築を設計していてどんなことに問題を感じますか? まぁ、問題だらけですけどね。
木村:
確かに問題を感じなかったことはないかもしれないですね。もうちょっと絞って聞いてもらっても良いでしょうか?
平沼:
芦澤さんは一番設計していて問題になることはどんなことですか?
芦澤:
僕は問題を発見するマニアで、問題がない仕事はあんまりしたくないタイプなんですね。だからこれが問題とかそういうことではなく、与えられた仕事のプログラムや、クライアントのこと、社会的なことなど、どこかに問題を発見したくなるタイプです。木村さんとしてはどうでしょう?
木村:
そうですね。この問題というのを、言葉の通りの問題ではなくて、ある種のそこに潜むきっかけみたいなものと捉えたとしたならば、最近クライアントさんとのやり取りのなかで、直接オーダーに対して応えるということを先延ばしにして、要求されているプログラム自体を設計しなおすということを考えています。それは、問題を浮上させるのではなく、そこに潜んでいるデザインのきっかけみたいなものをあぶり出していくプロセスをつくっている瞬間が最近多いので、そこに面白みを感じています。
松本:
問題を感じるという質問はちょっと良く分からないです。問題を感じていることばかりでもあるし、そのこと自体が何も問題ではないような気もします。
平沼:
次の質問にいきます。役割について。
木村・松本:
役割はないです。
芦澤:
どちらかが言い続けて、どちらかがずっと図面を描いているとかは?
木村・松本:
ないですね。
木村:
シンクロしすぎてて、ちょっと不気味なくらいかもしれないですけど、役割はないです。
平沼:
まったくフラットな感じ?
松本:
そうですね、そうあれば良いなとも思っています。2人でやっているので、客観性をお互いに持てるということでは、当然それぞれにその役割がありますが、かなり、一緒にやるようにはしています。
芦澤:
アイデアは、どっちかがふっと出すのか、それとも二人でどんどん積み上げていくのか、はたまたまったく違うやり方なのか、どんな感じなのでしょう?
木村:
アイデアというのは、お互い四六時中一緒ですから、その間にどんどん引き出しの中に放りこまれるわけですが、今向き合っているプロジェクトで、どの引き出しを開けるかはどちらかが気づく。ただ、引き出しの中は、お互いの関係性から入れられたものなので、そういう意味で引き出しを開けるのはどちらか、という役割はあるかもしれないです。気づきの早さとか、抽象的な側面なんですけど。
平沼:
ざっくばらんに言うと、僕らの上の世代でユニット派という建築家が多く出られていますが、僕の個人的な意見でいうと、とても面倒くさそうだなと感じてしまいます(笑)。
木村:
そうですか?
平沼:
思考の感じ方というのは人それぞれ違いますが、物事を一つ決定するのに、自分の中で色々シミュレーションをするじゃないですか。プロセスを全部話さないと、なかなか分かり合えないことが多いのかなと。それで、設計をやるときに、自分の考えの中で育てていったものを、相手と共有するということは、僕は不得意で、芦澤さんも見ていて不得意だと思うんですけど(笑)。
芦澤:
はい、不得意です(笑)。
平沼:
そこを共有していくことは、お二人にとって、結構自然にやれていることなんですか?
松本:
そうですね。前提をかなり共有しているというところが、実際の要因として大きいと思います。一回軽く投げてみることによって、その軽さが、やりたいテーマが薄まるという方向には行かないので、そのやり方については考えたこともないかもしれない。
平沼:
では、クライアントとの打ち合わせの際は、二人で聞くというやり方ですか?
木村・松本:
はい。効率悪いです(笑)。
平沼:
なるほど。

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