最近のそのデザイナーの仕事を見ていて思うのは、「自分がこれをつくりたかった」というのは、なかなか残りにくいですよ。みんなのためになっていないところがあるから。全部みんなのためにつくる必要はないにしても、今、その世の中や社会にどういう課題があって、みんながやっぱり切望しているというか、「なるほどそういうものがあったら俺らはよくなるんだな」と思ってもらえるようなものを真摯につくっていくことって、当たり前だけどすごい大事な気がするんですね。それがなんとなく、潮流としてそうじゃない「かたち遊び」になってしまっているとすれば、残るものにならなさそうだなと思うのが1点。だって次にまた、新しいかたちがくれば、そっちに目映るだけですからね。もう一つは、本日資料としてお配りしたイシュー+デザインという紙があると思います。あと、神戸+デザインというのがありますが。イシューというのは今言った社会に対する課題なんですね。社会が抱えている課題をどういう風につかみ取っていけるか、これ、デザイナーとかランドスケープデザイナーとかアーキテクトはすごく得意としているところだと思います。課題ってなんなのか、それを独特のやり方で解決していくのがデザイナーがすごくうまいところなので、そこをちゃんと若手のデザイナーと学生たちと考えようという風にして、神戸市さんと博報堂さんとフェリシモさんと進めているのがイシュー+デザインというプロジェクトです。ちょっと宣伝みたいになっちゃうんですけど、参考になるかもしれないのでぜひ、一度ホームページをごらんください。今、普通の一般的な市民の人たちが「このへん課題だと思う」「このへんがちょっと私やだ」「都市の中でこのへんがやだ」みたいなことがどんどん出てくるサイトなんですね。みんながつぶやいたらそこに反映されて、その中でみんなが多くの人たちが課題だと思ってることをまとめてデザイナーに投げて、これで1回コンペしましょうというプロジェクトです。出てきたのが震災の話だったりだとか、自転車交通の話であったりだとか、食の問題とか、そのあたりがすごいツイッター上で問題意識が高かったものなので、そういうみんなが問題だと思ってることで密接なデザインを出すことができれば、そのデザイナーはやっぱり優秀だと言ってもいいと思うし。それがおしゃれだとかなんとかだとか言う前に、1000人の人たちがそれを欲望として欲しがっているわけだから、ちゃんとそこに答えを出せるかどうかがデザイナーに問われるスキルになるだろうなと思います。
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