質問者2:貴重な講演ありがとうございました。ものすごく膨大な調査をされていらっしゃるので、どのように調査されているのかなということと、同じ敷地でも、もし歴史上に何箇所か候補があった場合、田根さんはどういう風に選んでいくのか。田根さんの元にある歴史上選んでいく部分根本は何なのかなというのが気になりました。良かったらお聞きしてもよろしいですか?

田根:難しい質問ですね。実は歴史というものと記憶というのは違うと思っています。歴史は1つの事実として編集されたり共有されて時代が分かったりすることで、ある種共通認識としてそれが変わったらみんな困ってしまうというような大事な史実があるんですけれど、記憶の場合は人で例えるとどこどこの学校に行きましたとか、どこどこに就職しました、誰々と結婚しましたとか、それはある種プロファイル出来るものとして歴史の事実としてあるんだけれども、実は自分個人の人格を作っているのは誰かと出会ったり、どこかで失敗した経験、怪我した思い出などそういったものが実は記憶の中で自分自身を育ててくれると思うと、記憶はもしかしてそっちの方に属していて、それをどうにかして場所から探り当てるというか、一生懸命に調べていく中でこれはこの場所しかないのではないかというものをいつも見つけようとしています。堀りながら何があるかは分からないけれど、それが見つかった瞬間にここに未来が生まれるかもしれないというのはやっています。すごく面白いところですね。

質問者2:ありがとうございました。

平沼:田根さん、今後どんな建築を作ろうと思っていますか?等々力の家、良いなと思っていて、見られませんよね?あれはすごいですよ。

田根:個人的にでしたら。ははは。興味を持っていただけたなら。

平沼:是非。今後どんな建築を作ろうと思っていますか?

田根:こんな建築という形があるものではないんですけれど、建築はやはり僕自身、未来を作るものだと思っていて、もちろん記憶というのは大事なんですけれども、過去のものを作るのではなく、今の時代に作るからこそこの時代に活かされ、願わくば次の時代やその次の時代までこの建築が生まれたことによって、人類が豊かになったとか、人生が変わったとか、そういうことは実は建築で出来る仕事だなと思っているので、そういうものが1つでも2つでも人生で出来たら良いなと思います。

芦澤:プロジェクトの大きさや人数は、別に関係ないということですね?

田根:そうですね。あまり気にしないですね。先ほどのユニオンのプロジェクトも弘前もあまり大小や内容に関わらず、この中で記憶が生まれ、そこから未来が作れないかということがやっていて非常に面白いところです。

平沼:夢のある回答が聞けた気がします。

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