平沼:(笑) 現在、そして僕らのような世代が学生だった時代に世界に出たことと、安藤さんが世界を旅した60年代と比較すると、情報もなく飛行機が使えず、各国へ入る制限の厳しさも違って、恐怖しか感じないのかもしれせんが、若い時代に相当な体験をすると、その経験が自信になり、迷い行動しないとその経験が不安を生むことを今ならわかります。

安藤:そうです。みんなやってみたらいい。好奇心をもったことを、情報だけを調べて頭だけでわかろうとせず、全身で行動してみてください。私はこの旅に費やした、たった10ヶ月程の中で、地球には色々あることを知り、後の自分の人生感に想像力が働きました。

芦澤:ありがとうございます。

安藤:少し余談ですが、先ほど触れた、京都大学の山極寿一先生というゴリラの研究家から最近、「安藤さんひとつ、コンゴで教会を作ってください!」と依頼されました。 この旅の頃を懐かしんで写真を見たら土壌、地盤の土が真っ赤なんです。この真っ赤な土に興味をもち調べていくと中々形成する成分がいいのですね。地元、村の人たちの教会を、この人たちの手でつくれるよう、この土で積み上げていくような建築はどうこうかと思ってスケッチを描いているうちに、記憶が蘇り、だんだん面白くなってきてしまうのです。だけどふとした時に、この年齢でまた、コンゴに行ってつくるのかと思ってしまうのですがね。(笑)

会場:(笑)

安藤:この頃に、日本も一周の旅に出かけました。東京や大阪、関西や一部の地方しかしらなかった私にとっては、日本というのはそれぞれに特色のある、なんて美しい国かと思いました。なだらかな連なりのある四国には、徳島や香川、愛媛や高知にも、その風土がもたらす風景が存在することに気づきます。東北に行くと青森や岩手、秋田にも、生活文化から建築様式の違いや、気候風土による工夫が施されていることに気づかされます。若い人だけでなく、皆さん、やっぱり日本からでも、旅した方が良いと思いますよ。

司会:平沼先生、とても残念なのですがそろそろお時間が参りました。

平沼:はい。安藤さん、会場からも質問をいただいてもいいですか。

安藤:旅の話しですか?(笑)

平沼:(笑)コンゴのことでも、もちろん建築のことでも、何なりお答えくださると思います。

会場:(大笑)

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