西沢:はい。これは、スイスのローザンヌという町にあるのですけど、その町の郊外に、大学のキャンパスがありまして、学生紛争の影響で70年代にキャンパスが郊外に移転して出来た70年代のキャンパスです。そこの前に、ラーニングセンターという、学生や教職員が交流できて学べる、新しい学びの場を作ってくれというコンペでした。ラーニングセンターとかスチューデントセンターとかいろんな言い方しているのですけれど、コンペの中で一番大きかったのはキャンパスが70年代風のインダストリアルなシステム建築で、中心がない延々と部分が連続してくような建築ですね。それで、中心的なモニュメンタルな物を作ってほしいと言われたのを憶えています。僕らがタワーを考えていたのですけど、タワーにすると、どうしても各階同じになって、コア形式になって、喫茶店でも図書館であっても何だって同じ平面になっちゃうので、違うなと思いました。最終的にはすごくおおきい180×160mぐらいの、大きなワンルーム空間、平屋にしました。だからタワーにすることでモニュメントじゃなくて、中心広場みたいな広場という事で、中心にしようという提案をしました。この大きさは色んな事から決まっているけど、一つは学生と先生が皆同時に一緒にいれることで決まった訳ですね。ただのワンルームじゃなくて、こういう風に部分的にジャンプすると、空洞がオープンスペースになる訳です。大きな建築は、中にいるとワンルームになっているけど外から見ると邪魔で。すごく大きいですけど、こういう風にジャンプすることで人々が通り抜けて行ける。キャンパスに行くのに建物を、迂回しないでもそのまんま行けるような、透明感が生まれます。エントランスを真ん中に持つことができて、どっから来ても裏が無いというか、真っ直ぐ中央に来て入れる訳ですね。こういう風にジャンプした建物の下をくぐって、エントランス広場ですけど、ここにアプローチする。そこから、行きたいとこに行くような動線計画です。コンペの時に色んなダイアグラムを作って、自分の案の何が良いかを色々宣伝する訳ですが、ここでも、ワンルームで立体的に上に上がっていくことで何が良いかっていう事を、色々絵に描いています。例えばレストランからの眺めがいいのをすごく言われていたので、そこまでスムーズに上がっていける。建物の奥の方でも外が見える。大空間はしばしば外が見えない。外が遠くなる弊害、マイナスがあると思っていたのですが、色々な穴を開けて、こういう風に開放感をつくろうとしていた訳です。床と屋根が平行関係を維持して、上がったり下がったりする形ですね。建物の中に、丘だとか谷が色々できてくるのですが、佐々木さんとのやり取りであっちが膨らんだり下がったり、構造的には急な方が良いのですが、あんまり急だと人々が登れないので、機能とデザインと構造、あと環境ですね。色んなことを合わせながら形を徐々に決めていきました。難しい形で、佐々木さんのプログラムが登場しないと決して計算できない様な形だったので、いくつも模型を作っては、計算してダメだという、そういうやり取りでした。最終的にこれが成り立った床の形でその上に屋根がかかるものですね。穴は、採光とか眺望とかそういう話をしましたが、それだけじゃなくて、大きなジャンプの所に穴を開けて荷重を減らすことで、構造的に何とか成り立つようになっているっていうような意味合いもあります。スイスはエネルギー問題にすごく自覚的で厳しくて、空調機を付けられないことで、自然換気で室内を空調しないといけないので、形を立体的にして上の方で抜こうとしています。ただの平屋だと形に限界があるので、2.5階まで建物を上げて上から抜くのですけども、その風の流れも想像できないものなので、コンピューターでの解析によって、穴や窓の位置が決まってきます。自然採光もスイスはすごくうるさくて、窓に対するテーブルの配置の角度まで法律で決まっているような国です。穴の位置を自由に開けているように見えるのですけども、以外に窮屈で色んな事で決まっています。一番大きいのは音響ですね。音が広がっていくことをどういう風に解決するかが大きい問題で、これは床とか屋根を、部分的に壁も作っているのですが、吸音板や反射板にして解決しています。1階と2階全てのプログラムを、並べた全体の見取り図ですね。谷に、学生カフェがあって、学生はうるさいので谷底に置いて、そのまま外に出ることができます。階段教室ですけど、合わせて尾根を横切らせて、斜面を作る。豊島美術館とも少し似ているのですが、内容と建築と、どっちがどっちのためにやっているのか分からない。形に合わせて機能を配置しているし、場合によっては機能に合った形を作っているという形です。形に合わせて機能をつくるのではなくて、その逆でもないような、どっちからはじまったのかわからないような状態を目指しているように思います。キャンパス側で一番の大きなジャンプをして、80mぐらいのジャンプをしています。ここをくぐって中に行きます。建物は地面に降りてきて、降りてきたところは全部勝手口になって出入りできるようになっています。これは階段教室のところで着地しているところで、イベントとイベントの間に休憩の時に外に出て、おしゃべりして、またリフレッシュして帰ってくるっていう形です。大空間ですが、すぐに外に出られるようなものをつくっています。1階と2階が連続して繋がっているので、1階とか2階という概念はないわけですね。中はワンルームだけど2階まで上がっていくので、いろんな交通計画が必要でした。展望レストランがここの上にあるのですが、そこに行くと、お店の人が物資を運ぶ緩い坂とか、学生が日々使う坂とか、スイスはバリアフリーも厳しい国で、トロッコみたいな電車を中に走らして、みんながあらゆるところに行けるようにしています。これはあのエントランスから見たとこで、丘の先にオフィスがあるのですが、見えないわけです。丘を登っていくと、隣の学科で何をやっているかわかる感じです。人々の交流を促進するような空間をいろいろ考えて、最終的に辿り着いたのがワンルームです。どんどん進んでくと探求していける。隣側の学科まで行けるような感じです。70年代の既存のキャンパスが教室型で、廊下があって教室があって分かれているのですが、教室の中で勉強して廊下で移動する。機能的にいうとそうなっているのですが、よく見ると実際は廊下でも勉強しているのです。先生に移動時間中に相談したり、質問したり、学生とお互いに情報交換したり。そういう意味では、壁を取り払って、お互いに交流し合えるとか、隣の学科の活動が覗けることで、今まで持っていなかった興味が生まれるような空間を目指して、教室が並ぶような形じゃないような教室を目指しています。 |