平沼 : 外装面にでている光の扱い方がすごく独特な感じが出ていたじゃないですか。妹島さんにとっての光の扱い方って、透明でありながら放つみたいな、放ちながら黒い部分をつくっていくみたいな曖昧な光の感じがあって、今までのプロジェクトの中でご自身の感覚に一番ぴったりだったいうものってありましたか?

妹島 : それがですね(笑)。いまはもうちょっと薄暗い快適性というのをやってみたいのだけど、それがなかなか難しいですね。若いころのほうがもう少しはっきりしたものを好んでいたと思います。いまアルミが好きなのは、ぼんやりするというか、映っているといっても、あんまり激しくなくて、なんとなくふわっと浮かんだみたいなぐらいのほうが…そんなのがよくて。前よりももう少し柔らかいものにしたいなと思っています。それは、結構昔から思っているのだけど難しいです。

平沼 : なるほど。妹島さんという建築家としてのご自身の個性はどんなところにあると感じられておられますか?

妹島 : はっきりしているところかな。なんとなくバサッとしてる。(笑)

芦澤 : そうですね。僕がみる妹島さんって、モダニズムをつくりながら、ぶれてない感じがしていて、そこの極めた行先に妹島さんだけが突っ走ってゆけているイメージがあります。他の建築家では行き詰まりを感じてしまうようなことにぶち当たっても、新たな手法を見出そうとされているところに、言い方があっているかわかりませんけど、抽象的な空間の可能性をずーっと、探られているように感じています。モダニストたちとの距離について、妹島さん自身は考えていらっしゃることはありますか?

妹島 : あんまり意識していないということと、でも、片方でそんなに否定をしていなくて、その先に自分たちが生活しているということをなんとなく思っているかもしれません。自分がやってきたことというのが、今後どうなるかわかりませんけど、硬い、柔らかいでいうと、いまは柔らかいほうがいいかなと思っています。個性はというとスパッというのがあるのですけど、それはちょっと強すぎるのかなと。そうじゃないほうがいいかな、ということを実は、最近思っているところです。

芦澤 : それは犬島のプロジェクト辺りがでている感じでしょうか?

妹島 : ある時期まで、「白いですね」、「白いですね」、って、ずっと言われていました。それは再春館のときからはじまって、美術館が多いとどうしても白を要求されるのも影響をして、でも、プランニングが影響していると思うのですよね。ただ白く塗っているだけのものというより、光がどうあたっているか光が拡散するようなプランニングになっていて。ちょっと薄暗いような場所だからといって洞穴みたいなものをつくりたいというのではなくて、今までと同じように、つながっていくようなプランだったり行き止まりじゃなかったり、色んな選択肢があるプランをつくりたいのだけれど、片方で、明るいのではなくてもう少し薄明かりのようなことをイメージしています。ずっと動いているイメージが多かったですね。今は、なんとなく、留まるというか、動きながらとまって、でもまた動けるような空間をつくりないなと思っています。

平沼 : 妹島さんが会場を離れるまで、あと5分です。僕たちの質問はこれくらいにしておいて、
会場から質問をお二人くらいお聞きしてもいいですか?

妹島 : はい。おねがいします。

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