妹島 : 次は、1期工事がおわって、今2期工事にとりかかっている犬島のプロジェクトです。関西のみなさんの方が犬島は良くご存じかと思うのですが、直島から30〜40分くらい船でいくと岡山市になるのですが、そこに犬島という小さな島があって、その島に小さな集落があります。昔は2〜3,000人住んでいたそうですが、今は50人弱くらいで平均年齢が75〜76歳くらい。そこを福武さんがこの島を元気にできたら、ということで始められたプロジェクトです。たくさんの空き家がそのままになっているので、それをリノベーションして、小さな集落をひとつの美術館のようにできないだろうか、ということでこの計画に関わらせていただきました。空き家の中から、貸していただけるか交渉をして、最終的には10軒くらいが候補になりました。船を降りて歩いて行くと石の山の向こう側に1つ目の敷地があります。次が一番高い場所で、集落を見渡して降りて行って、この辺に3期か4期でできたらいいなと思っています。集落の真ん中に入って、次に石山に挟まれた2つの場所があって、これは1期工事でやって、今は2期工事の準備をしているのですが、これとこれでセット。また上がって行って休憩の場所があって、降りてきて、これも2期工事のリノベーションの準備をしていて、そこから下り坂になります。最後は1期工事で終わったもので、ぐるっと回る。基本的には木造の家が建っていたり崩れていたりなくなっていた場所なのですけども、分解をして使えるものは使おうと。あまりにも使えないところは、迷ったのですけれども、新しいストラクチャーを取り入れることにして、アクリルと、アルミの構造を使っています。
全体として建物のリノベーションだけでなくて、エリア全体をリノベーションしていって、実際ギャラリーになる場所はすごく少ないのですが、島の雰囲気を残しながらちょっとづつ変えていって、その島の良さと少し新しい雰囲気が混じり合った、新しい現況が浮かび上がればいいなと思ってやっています。これらのギャラリーは、常設展ではなくて企画展を行うためのギャラリーです。ゆっくりゆっくり変わります。今、第2回目の瀬戸内芸術祭のある来年春に向けて2つ建物を足していて、それと共に企画展として新しい展示が準備されていたりもしています。始めはすっきりとした四角形のギャラリーを考えたのですが、そういう大きなまっすぐなラインはこの島では暴力的なことになってしまうということがだんだんわかってきました。基本的にはみんな車が通らない2mくらいの歩道ですので、そこからつくられる小さなスケールをつなぎ合せながら、この集落はできあがっています。一般的でシンプルなギャラリーをつくると、ものすごく強くでてきちゃうということがわかってきて、それで少しずつゆがめたりしました。意図として、さっきのほうは木造とガラスで透明。ここでは、アルミで周辺を映し出しながら、中に入って行って、周りの風景が中に入り込んだ場所でアートをみる。通り過ぎると、次は2つセットでつくられる場所です。1つ目の方が、最初は道に沿った緩いカーブを考えていましたが、緩いカーブだと構造にあまり利かないで厚くなってしまって、厚いと重たいから小さく切らなきゃいけないとか。材料の搬入は、船で運んでここまでもってきて、それを組み立てる重機ということで色んなサイズと重さが決まってきています。もっと急なきついカーブにすると半分の厚さになるということで、こんなかたちができてきました。今、準備しているのがこっちのリングのもので、この2つのセットでこのエリアの雰囲気をつくろうとしています。意図としては、この中のアートをみていても、片方で集落だとかここにお住まいの方々の生活、畑なんかが一緒にみえてくるというものです。これはアクリルを建てているところですね。次が休憩所で、一番高いところにまた戻るのでそこはアルミで。工場でつくったのはこんな形です。
もうひとつ今リノベーションをやろうとしているのが、とても立派な小屋組みのものです。もとの状態がこれで、完全に崩れていなくてまだ使えるので、今これを組みなおそうとしています。この抜きの構造がダイナミックなのでそれを積極的に使おうとしています。松でつくられているので、赤っぽいようなものをつくろうと今思っています。そして最後、そこから降りてくると1期工事でやったリノベーションで、大きな窓を2つ空けて、降りてきたら対角に向こう側の風景が見えるように考えました。
これはまたこの島の石ですけれども、繰り返し繰り返しいろいろなところでこの石がでてきます。新しい計画は、島を歩きながら、石がでてきたり、木がでてきたり、アクリルがでてきたり、アルミがでてきたりという繰り返し異なる素材の経験をするような順路をつくろうとしました。

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