平沼 : ありがとうございます。
前半を終えて、いくつか質問をさせていただこうと思っています。ラーニングセンターのつくり方に、今、学生の皆さんがたくさんの影響を受けています。まず、このプロジェクトの質問からさせてください。

芦澤 : 床が斜めになっている場所は、具体的にはどのような使い方をされているのでしょうか?

妹島 : 実は、動線だったり分けているのですが、大きなクッションのようなものを用意してあり、学生の人たちがゴロゴロしていいたりべたっと寝そべって本を読んでいたり、いくつかをかき集めて陣地をつくったり。原っぱで適当に座って休憩しているようなのと同じような使い方ですかね。子供なんかはきゃーきゃー言って鬼ごっこしたりしていますね。(笑)

芦澤 : モダニズムの均質な空間の中で自由にしてくださいというのではなくて、ある種の地形のように、起伏ができているのですけども、いろんな場所性ができていいなぁと思います。場所性をいろいろつくるときに、触感とかを考えて素材をかえていく方法もあると思うのですが、妹島さんはそういう手法をとらないですよね。その辺は考えられているのでしょうか。

妹島 : 最近、いろいろ変えたいと思っているのですが、訓練ができてないのです。このときも、もともと私たちはほとんど全部コンクリート床で提案していて、一部がレストラン、あとはちょっと静かになったらいいなとおもうところだけ、雰囲気をかえるために違う素材をいれていたのですね。一番は音の問題で、シミュレーションをやって、20何パーセントをコンクリート以外にすれば音問題もだいじょうぶだというところまでいったのですが、どうしてもそれについてはクライアントの人たちが同意できないということで、最後は日本人とスイス人との違いだということになり、コンクリートはだめだってことになったのです。

妹島 : 犬島のなんかの場合は、最初すごく迷って、新しくリノベーションしていくから、新しくなったところだけ統一していかないと、ただ集落に埋もれるだけで何をやっているかわからなくなるんじゃないかと、恐怖もありました。でも、だんだんこれは新しくデザインされた家のようなギャラリーだと思われてもしょうがないかなと。時間をかけながら自分でもわかってきてできるようになってきて。それだったらむしろあるバランスでできるような、集落を歩きながらいろんなものが、なにかがでてきて、つぎにまた違うのがでてきて、みたいなことにしたらいいのかなと思ってきました。ご質問に対しての回答は、材料はあるときからいろいろ使いたいなと思っても、材料そのものは力が強いから、訓練がいりますね。それがまだ私たちの中で整ってないという感じです。

芦澤 : それは色に対しても同じですか?

妹島 : うーん。そうですね。できれば素材の色のままでいきたいというのはあります。初期のうちはいろんな色を使っていましたけど、とんでもない派手な模型をつくっていたなと反省しています。今はペンキの色というよりは、素材の色が微妙にでてくるようなものになったらいいなと思っています。

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