芦澤 : なるほど。次は光ですね。「LIGHT」のお話をお願いします。
赤松 : これは、カタールのドーハ にできた 、Liberal, Art & Science Collegeという、大学の教養学部棟です。カタールはものすごく日差しの強いところなので、その光をどういう風に取り込むのかということが課題でした。 日本でやっていることとは、少し違っていて、あまりダイレクトに取り込みすぎてしまうと強すぎるので、その辺りをどう扱うかということを、このプロジェクトでは おこなっています。
これは、ダブルルーフで、ダブルスキン になっていて、熱環境 にも考慮しているのですが、 外壁の外側にパネルを 吊ってあって、それで光を少しコントロールしているというものです。
平沼 : 風が快適そうですね。
赤松 : 風については、ウィンドタワーが あるのですが、あまり自然の風を取り込むと、砂漠なので、ものすごく細かい砂が入ってくるので、このウィンドタワーは半地下駐車場の換気のためにつくったものです。ただ、この自然換気はものすごく効いています。
芦澤 : そうですね。カタールのプロジェクトは、またあとで出てきますので、もう少し抽象的にお聞きしたいのですが、今までの近代と比べて、小嶋さん、赤松さんが、光の扱いをどのように違うアプローチで考えていっているか、というのはありますか?
小嶋 : 光は建築家にとって、ずっと主要なテーマですから、そんなに簡単に新しい話題は出てきません。
芦澤 : そうですよね。
小嶋 : ただ、ここの 光は本当に強いので、この建物に関して言うと、インテリアもエクステリアも徹底的に反射でやろうとしています。
芦澤 : なるほど。
小嶋 : このパネルの裏側の黄色が光っているように見えるのも、反射なのですが、東京で、模型や原寸でいくら試しても、1m離したときに、黄色なんて反射してくれない。だからもう、賭けみたいなものなのですが、現地では光はちゃんと反射しました。そういうことができたのはおもしろかったですね。
平沼 : ということは、狙い通りですか?
小嶋 : だいたい狙い通りでした。でも、こういう遠隔地での仕事は、実施設計になると、僕らから変更できないので、本当は現場で決めたいのに、本来の建物の壁と、アウタースキンとの距離を、いくらにするかというのを、スケマティックデザインの終わりのときに決めなく てはいけない のが難しい。
芦澤 : では、次へいきましょうか。「WATER」ですね。
小嶋 : はい。【画像】 水が流れ るという のは当たり前です。【画像】 メコンデルタの 辺に大学のキャンパスがあって、これは初めて敷地に行ったときにとった写真。とは言っても、どこが敷地なのか、誰もよくわかっていない。延々 このように迷路みたいな状態 の場所です。雨季と乾季の水位に違いやスコールといった水の取り扱いから、設計することもできます。
芦澤 : 次は、「ACTIVITY」です。
小嶋 : 【画像】 羊の群れを、乾草で囲って、プランの原型みたいで面白い写真なのですが、建築のプランはこういうふうに囲い込んで制御してはいけないと感じています。
赤松 : 【画像】 これは、打瀬小学校という、いちばん最初に 設計した小学校の、子供たちのアクティビティのシミュレーションです。1こ1この点が子供たちの動きを示しています。 実は プランを下敷きにして、子供たちがどういう風に活動するのかと いうことを、やっているのですね。 朝の時間の想定なので、だんだん教室がどこにあるのかが見えてくる のですけども、いろんなところから子供たちがやってきていて、またいろんなところに散らばっていくっていうようなことを、 まだコンピューターが 今みたいに解析とか を簡単にやれるような頃でもなかったので、 これはプログラムを組んでもらって、1こ1こ、人の手で入力しています。
芦澤 : これは実際に、人の動きを調査して、データにされているのですか?
赤松 : いろんな学校に行って子供たちの活動を見たうえで 、教室とか、昇降口がここにあってとか、ランドセル棚がここにあってとか 、1人1人を 全部その子の気持ちになって動いているっていう ことを何百人分かやってるものです。
芦澤 : なるほど。次は「SOUND」 ですね。
赤松 : はい。これは、音の解析です 。【画像】 これは美浜打瀬小学校の写真なのですが、オープンスクールだと、やっぱり音が問題になるので、東京大学生産技術研究所の研究室に協力していただいて、空間を5cm立法に全部切り刻んで、そこをどう音が伝搬していくかということをコンピューター上で解析して、どこにガラスを立てるとか、吸音率をどのくらいにするかということを、全部シュミレーションしたうえで、配置や仕上げを決めていっています。
芦澤 : なるほど。次は「CITY」ですね。
小嶋 : 【画像】 この写真のように、都市は流れているものだと捉えています。実際の交通のように目で見て流れているものでもあるし、ある100年の映像を10分でまわしたら、建物というのはどんどん変わっていく、そういう流れもありますが、都市というのは、背景だったり、基盤だったり、動かないものもあります。すでにあるものをリスペクトするのはいいのですが、あらゆるものはそういう流れをどう掴んで、すっと立ち上げるかということを考えた方がいいのではないか。だから建築とは出来事なのだという捉え方をしています。
芦澤 : 出来上がったものも、流動的なものだということなのでしょうか。
小嶋 : できあがった建物はもちろん固形物ですが、それによって 流れている流体がより良く流れるように、建物ができればいいのではないかと思います。
赤松 : 人の流れであったり、風の流れであったり、いろんなものが流れていることの集大成が街であったり、都市であったりするのだと思います。 |