会場:今日は貴重な講演をありがとうございました。私が質問したいのは2つあります。まず一つ目が、人の記憶に残ったり、地域といいますか家族の中の記憶に残ったりするものは、構造の柱というよりはその欄干だったり、簡単な欄干でも記憶に一番残りやすいものではないかと思ったり、装飾物の方がそのような可能性があるのではないかと思います。建築の装飾物についてはどう考えているのかお聞きしたいです。また先ほどの都市を100個ほどの大きな集落として考えるお話で、集落の一つの定義をどうしていくのかなという、自治会みたいな大きさで考えていくのか、それともまた違う枠組みで考えたらいいのかというのが、どうなのかお聞きしたいです。

山下:はい。難しい質問ですね。2つ、装飾の話、その都市の話ですかね。装飾の話でいくと僕は、ストラクチャー、構造と装飾は僕の中ではあまり分け隔てがないです。なぜかと言うと、素材を普段使いますが、素材という言葉は建材ではなく、これ自体が本質的に持っているものが、ストラクチャーになり、それが装飾すなわち飾りのようになると考えています。僕ですね、役者さんで言うとメインのキャラクターがいて端役さんがいますが、この端役さんが素敵なのはやはりメインのキャラクターが素敵で、端役さんが素敵であるほど、映画やドラマはいいものになるんですよね。そういう意味でそれはどういう事かというとメインもサブもなくて、この一つのドラマを組み立てるには、この人たちがみんな必要な存在である。そのように僕は常に考えています。だから装飾さえもメインであり得るとも思っていて、装飾が付属物であるというのが僕の中ではないからあんまり答えにはなってないのかもしれないけど、装飾は一装飾ではないです。という答えをしましょうか。そして、2番目の話、都市の話でいくと、えっと自治会とお話しがありましたが、それは地域性、場所性だけの話だと思います。場所性の話はもう場所性。場所性だけというのはもう終わりだと思っていて、先程のシナプスと言ったのは、例えば映画サークル、音楽サークルがと言ったときに、そのサークルで10人いた時には、隣に住んでる人ではないですよね。それは例えば大阪でいうと、福島にいる人もいれば、茨城にいる人もいれば、鹿児島にいる人もいれば、いろんな人がこの一つの目標の中にいます。そういう意味では、場所性の集合体ではなく、逆に言えば周りの気持ちの問題であったり、趣味の問題であったり、違うものが色々繋がっていきます。そのようないろいろなものがリンクしているところが都市になり得るのではないかと思います。だから、自治会は廃れる、それは仕方がないと思うんです。場所性だけでも都市は語れないです。何かのお祭りしますよっていった時には、その場所だけじゃない人達もいっぱい集まってくるじゃないですか。そういうことだと思います。

会場:そういうつながりを作るのは、趣味や共通点で、そのようなまとまりができるということなのでしょうか?

山下:そうですね。そのようなつながりが、もう少しこうある組織体になっていくことと、それが連携していくこと、それがリゾーム、木の根っこですよね。リゾーム的になること、シナプス的になることというのが何かすごく新しくて、それに少し点線的なインフラみたいなものが何かこう織っていってくれる、紡いでくれるといい都市なんじゃないかなーっていう気がします。

会場:はい。とてもありがたいです。
ありがとうございます。

平沼:ありがとうございます。僕たちもそして会場の皆さんの表情をみても、もう少しお聞きしたいと思われる方が多いと思うのですが、ほんとに残念なことに、あっという間に時間がやってきました。

山下さんに最後の質問です。月並みのように毎回、ゲストの建築家へお聞きしています。
さきほどの山下さんのお話しにもありましたが、20世紀型のモダニズムに引っ張られた、僕らぐらいの世代まででしょうか。この近代建築を目指す思考の華々しい建築家のタイプだけではなくて、これからは地域に根ざした街づくりや民家の再生をはじめとした、修復の次代へと移行していくと思っています。今日、お話しをしてくださった山下さんの取り組まれているプロジェクトを見ていると、故郷・奄美を中心に、街づくりの基軸となる取り組みや、小さな古民家の再生をはじめ、多くの取り組みをはじめておられます。また広く社会にとっての問題、高齢化が始まっている現状をまだ建築家側から提案できていない現状でもあるのに、奄美といえども、やっぱり取り組みをはじめている。
今日の会場は年齢層が若く、建築家を目指すような学生が多くいると思います。そんな若い彼らに向けて、「建築家」とはどんな職業でしょうか?

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT