平沼:奄美のような自然豊かな場所に、深く取り組まれている山下さんが、東京や大阪、福岡などの都市は、どのような都市空間になっていけばいいと考えておられますか。

山下:東京は事務所が表参道で住まいが西麻布、ど真ん中のど真ん中に住んでいますし、福岡の場合は大名という場所で、ほとんど真ん中なんですね、そして奄美大島。三拠点に行って面白いと思うのは、「東京って駄目だよね、福岡って駄目だよね」というような言葉はあまりなく、やはり最後は人だなと思っています。
東京って正直面白くないと思う事ってたくさんあります。それでも、人がいる限りには、ありだと思っていて、昔だと浅田彰の構造と力、ドゥルーズ=ガタリのツリー状とリゾーム状って言葉があったと思うのですが、ツリー状というのはある経緯的な縦系列なのですが、リゾームというのは木の根っこなんですよね。要は、リゾーム的な集落的なものが、それが一個あるのか十個あるのか百個あるのか一万個あるのか、それがそうやってネットワークされているのかというのが集落と都市の違いだろうなと僕最近思っているので、東京も大阪もそうですが、ある集落の集合体と考えて、その集合体をどのようにインフラがつなげたりすればいいのかと考える方がよくて、昔はインフラ動線ありき、大きな枠ありき、枠の中で決まっていましたが、そうではなくて、人がベースだから人との関係性となると集落ありきで、その何百何万の集落がどのようにネットワークでつながっていけばいいか、そのためのインフラを作ると考えれば、僕は都市は面白いと思います。そうするとシナプスと同じように、集落が持っているシナプスは三つかもしれないけど、東京大阪がもっているシナプスは30とか50かもしれない。そのシナプスがいっぱいあるからこそ多様性があって面白くなる。そのようなところに東京大阪がいくとすごく面白い。やはり大阪の方が可能性があると思うんです。さっき大阪のおばちゃんの話をしたのと同じようにやっぱり人の面白さがあると思うので、東京より大阪の方が絶対可能性がある。面白い都市が生まれるのは東京じゃなくて大阪だと僕は思うんですよね。

平沼:冒頭にお話しいただいた「人」が世界遺産の場所ですし、確かに東京とはまた違った街の集まりがつくれそうですね。

山下:別におべっかじゃないですよ。(笑)

平沼:いや、会場の皆さんも希望を与えてもらえて喜んでいます。(笑)
でも大阪はそうなんですよね。山下さんが仰ってくださったように、昔の都市計画の考え方は、車や電気、水道、電話などのインフラ中心の線の引き方で、大阪の場合だと、御堂筋や堺筋などの南北に走る「筋」と、中央通りや千日前通りなどの「通」で碁盤目に引かれた計画に、ブロックに区画を与えて街を決めていきましたね。 俯瞰した都市としての大計画としては整備しやすく管理は満足するけど、管理上の経済性を優先させた計画を重視しているから、経済がちょっと停滞してしまうと、とても住みにくくなります。

山下:そう、20世紀型なんですよね。グローバルってよく言うじゃないですか。グローバル経済とか、建築もグローバル化したじゃないですか。コルビュジエがモダニズムって言葉の中で、どこでも同じようにコンクリートの建物でフラットで、ガラスでなどと言っていたのは、何かというとみんな幸せを満遍なくみんなに広げようという意味でモダニズムとしてあったのだけれど、経済と同じようにある大きなみんな同じような網をかけてしまったものだから、それはそちらに行けば、全然合わないものになっていくんですよね。

平沼:人が魅力的に思わなくなり、そこに住む人の個性が失われていきますしね。

芦澤:ここの場所周辺の街づくりは、大阪らしい作られ方では決してないですね。大阪駅というよりも、JR京都駅〜JR三宮の中間地点として、関西駅としての役割ですね。
大阪はやっぱりミナミ地区に代表される、道頓堀や天王寺辺りですね。

山下:そう、大阪は圧倒的に、あのあたりの方が面白いですよね。10年ほど前の大阪は、道端で将棋を指せていたじゃないですか。天王寺動物園の前には、路上のカラオケ広場があったり、通天閣の周りには、いつでも露天商が並んでいました。でも今は整備されて、楽しくない街になりましたね。 治安の向上から外国人は増え、衛生的にきれいになった串焼きを店で食べられるけれど。

平沼:すみません、はい。
うんうん、「街の活力=人々の魅力を表現できる場所を持つ力」なのに、均質化した価値を目指し、主要都市を習ってつくった結果、みんな本当の主要な都市へ行ってしまうことを知っているのに、街や人の個性に蓋をするのは、もう止めてほしいです。
この辺りで会場から質問をいただいてもいいですか。

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