平沼:こんな檀上で申し訳ないのですが、いつも本当にありがとうございます。安藤さんこんな機会もありません。もう少しだけ、どうかお聞かせください。ご自身の建築を、どの様に歴史に位置づけられていますか?

安藤:別にそれほど、歴史的に残る建築家ではありませんが、全力で生きてきた部分についてだけは自慢の種かな。大体この歳まで、まだ全力で生きとうとしているのは、珍しいかもしれないね。そこだけは、なかなか価値があるなぁと思います。

平沼:高齢になられてからでも、現役で自らが設計をされておられた建築家の方たちが少ないということですか。

安藤:ちょうど私の30歳ほど上が、丹下さんですが、60代で設計の現役生活は終えているように聞きました。海外では、同世代のイタリアのレンゾ・ピアノやフランスのジャン・ヌーベル等は、まだがんばっていますね。

平沼:安藤さんの密着取材をされたテレビ番組を、約30年前の学生時代にみたことがあり、毎日の凄さに衝撃を受けていました。今ではどのような毎日を過ごされておられますか。

安藤:朝、事務所に行くでしょ。電話しながらスケッチを描き、図面をチェックして、これは設計料いくらか?と聞く。

会場;(大笑)

安藤:まだ私、よう働きますよ。(笑) そんなことしてたら、クライアントがバーっと事務所に入ってくる。「饅頭持ってきました!」とか、「美味しい洋菓子もってきました!」とか。みんな私のこと嫌いやから、なんとかして糖尿病でやっつけようと思ってるんでしょうね。糖分の多いのばっかり持ってくる。

会場;(爆笑)

安藤:もう糖尿病なるから要らんと言うのに。そうして13時までは働きます。食事を1時間ほどして、それから1時間ほど休憩するんです。そこで本を読み、考える。ちょっと、うたた寝したりしながら過ごして、また3時過ぎに事務所に戻ってくると、所員がイヤーな顔をする。(笑)

会場:(笑)

安藤:また帰ってきたのかと。まぁ、朝から晩まで喋っている。

平沼:わはは。(笑)

安藤:しかし所員と仲良くしたら面白くないんですよ。できるだけ戦わないと彼らも育たない。大阪にいるときは18時半頃まで事務所にいますね。それからアスレチック・ジムで運動して、20時過ぎから食事をして家に帰る。大体、同じパターンです。

 

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