安藤:最適化を示すのが人類の正しさであれば、インターネットで少しみる程度でしょ。でもそのほとんどが、現在は、人間が意見したり経験した事柄の集積だと思います。それをAIが勝手にはまだまだ、自発的に発言をしてくれなくて、それができた時代が到来しても、優れた建築をつくるのには、まだまだ相当な時間が掛かります。人が均質化しても、受け手である人には感情があります。話す人が誰かによっても、受け止め方は当然、変わってきます。そしてここにいる私だって、誰に呼ばれるかによっても違ってくるし、この会場にいる人たちの状況が変われば、この話しも違ってくるでしょう。これからの時代は、その人間力を、今、どこから学ぶのかということを、自分で考えないといけない時代と思います。

質問者2:ありがとうございました。

平沼:最近、老後のことを心配していたり、AIのように新しい時代の到来に、先回りした危機感を感じている
若い人たちが増えているように思います。

安藤:絶望的やね。(笑)

会場:(笑)

安藤:自分で体験して失敗をしていないことに落胆する。そして失敗したら取り戻そうとがんばらないで、 辞めてしまうなんて、AIに負けそうです。(笑)AIの進化もエラーで成長するようですが、人は失敗で成長してい くものです。先輩からその失敗に気をつけるように教わり、インターネットで検索して情報過多になりすぎて身 動きがとれなくなる。

平沼:(笑)僕らも含めて、事故のないような備えを教え過ぎているのかもしれません。
安藤さんは今後、どんな建築をつくりたいと思われていますか。

安藤:いまは、どんな建築をつくりたいとかはないんですよね。頼まれたら面白そうだなというものを選ぶようにしているだけです。でもね、どれが面白いかな、と必死にずーっと考えます。(笑) それでも、ともかく人間がそこの空間にいたり、集まって、活き活きして、生きてきて良かったと思うものかな。建築じゃなくていいのです。もちろん、1本の木でもいいんですよ。木がだんだん大きくなってくる。あの木を見ながら私は育ってきたんだなというように、もし建築なら、その建築を観て、その風景と共に育ってきたんだな、という風に感じてもらえるような環境や建築をつくりたいと思っています。高度成長期と違って、建築が発展のような希望とはならない時代に、もし建築家を目指し建築家になりたい人は、男性なら奥さんに働いてもらって飯を食わせてもらうように。女性が目指すのなら、男性は肉体労働してもらう。今も昔もこういうパターンですね。

平沼:バランスですね。

安藤:そう、バランス。私の周りの人にも、まだ結構いますよ。(笑) 本人は主夫をしている、そしてお母さんが経理事務所をやっていてその扶養家族になっている。良いでしょこれ。何かを目指すためには、これしかないです。そういう風にしないといけませんが、頼りっきりでも、成し得ない。楽しては叶えられません。(笑)

平沼:(笑)安藤さんは、皆さんに個性を持てと言ってくださったのですが、個性の塊のような安藤さんへ、叱られるのを覚悟に聞いてみたいのです。ご自身の建築家としての個性をどう思われていますか。

安藤:(笑)いうね。でもな、やっぱり自分の思うように生きたいと思ってきたから、大阪だけじゃなく、東京に行っても嫌われ者でいますよ。あの人は自分の言いたいことしか言わないと。

平沼:(笑)安藤さん程の方が、何も言わないと恐ろしいですし、今日なんて、なんでもご質問に応えてくださいます。掛け合いのような気質から生まれるアイディアには、大阪の土壌や素質が存在すると思うのです。僕らはちょうど、安藤さんの30歳下、後輩の建築家ですが、多くの者たちが、いつまでも憧れていますし、敬意を評しています。

安藤:そうでもないよ。

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