芦澤:小川さんの建築って、微妙に大地から浮いているものが多いですよね。建築って普通、地面から立ち上がっていくという通常の概念がありますよね。それに対して、大地から壁が立ち上がっているものと、微妙にスリットがあって浮かされているものは、違う感じがします。カルバン・クラインの時のように、ポンっと置いているものは。

小川:どちらかというとさっき104Xでしたように、プロダクト的に作れるといいかなと思ってはいるんですけどね。

芦澤:なるほど、合理的で軽快に作られたいということですね。

平沼:スライドを見させてもらっていると、小川建築の線の本数がすごく少ないじゃないですか。空間からディテールが消えていて、でも消えるっていうことは、裏側ですごいシステム化していないと無理ですよね。

小川:さすがによいご指摘ですね。(笑) 前に「見えないディテール」っていう本を出したんですけど、要するに建築家の手法として考えたものをできるだけ見せたいというか、からくりを見せたい建築家も沢山いますが、私の場合考えた痕跡を見せたくないという考え方なんです。内向的かもしれませんが、結構、考えているのですが、何も考えてないように見せたいと思っています。

平沼:これまで苦難の蓄積が想像できます。逆に初期の作品は、相当、ご苦労をされていませんでしたか。漏水や雨仕舞の難しい箇所など?

小川:そうですね。うちのは幸い漏らなかったです。屋根は、相当、シンプルな仕舞にしたことから漏らなかったのですね。

平沼:なるほど。ディテールがすごく考えられていますね。

小川:そのおかげで、施主もリピーター、施工会社もリピーターが多くなります。その分、できるだけ簡単にできるようになっていくのだと思います。

芦澤:結構緊張感のあるデザインに見えながらも、許容力のある形で、施工者に対しても柔軟ってことですね。あと先程照明のお話もありましたが、既製のプロダクトとはほとんど使われないようにされてらっしゃるんですか?

小川:いや、使いますよ。いいものがあれば使いますけど、なければ作りますね。水栓とかも結構作っていた時代がありますね。最近は手抜きで既成品使いますよ。広島の現代美術館で展覧会をやったスペースです。片方がスペース、もう一方が事務所みたいな仕事場です。ニューヨークでインヴィジブルランゲージ展をファイブアーキテクトでやったものですね。ニューヨーク、ミラノのトリエンナーレですね。ロンドンのジャパンイヤーの16人展ですね。スペインのジャパンイヤー、10人の建築家展です。だいたい僕以外は有名な人です(笑)。伊東豊雄さんとか、坂茂、隈研吾、妹島和世、西沢立衛、藤本壮介。私以外はみなさん有名です。アメリカのイーストパックというバッグのメーカーが小川さんの一日を追っかけるということで付きまとわれて、ずーっとフランスのカメラマンが撮って、バック持たせられて。東京事務所の動画ですけども、ちゃんとずっと撮っているんですね。事務所の模型ですね。四日市に新幹線に乗っていくときもついてきて、カメラ、余計なやつを撮っていくのです(笑)。これは今までつくった住宅の図面です。最初のキューブサイズ6m級です。150M WEEKEND HOUSEですね。
最後のスライドは、広島の事務所からの風景、こちらが東京の事務所の風景ですね。

平沼:ありがとうございました。それでは会場からのご質問をいただきましょうか。

質問者1:今日は貴重なお話しをお聞かせくださって、ありがとうございました。私は、小川先生の書籍や作品集を全て持っているのですが、ビデオプロジェクターで、画像を壁面に映すという提案が初期の作品から多かったと思うのですが、当時から、意識されていたことをお聞かせください。

小川:ありがとうございます。そうですね、大学時代の卒業設計からですかね。建築が変化するといいかなって思っていて、リストアステーションの場合は、映像をうつして、バーッと並んでいる箱ボリュームが変化するというか、そういう建築になったらいいかなぁと、映し出していました。先ほど話ましたように、食事もいろんな国籍の料理を食べたいし、いろんなジャンルの音楽も聞きたい。そして現代は、空間も映像によって疑似体験できるじゃないですか。当時は、今からすると大昔ですが、そういう予見を表現していました。住宅についても、いれものはニュートラルですけど中に入れる物が変わると、白い家具とかいろんな色が凄く変わりますよね。そういうふうに割と変化する建築がいいかな。

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