平沼:会場からの質問を含めてね、5分前くらいだとしてね、あと80枚あるんです。

永山:あっ、すごい。持って来すぎ。

平沼:プロジェクトを残り2つくらいにちょっと絞ってもらって。

永山:そうですね。豊島の横尾館をそのまま説明させていただきます。ゆっくり喋り過ぎちゃったかな。

平沼:いやいや、あっという間で。

永山:はい。豊島の横尾館って言うのは、直島の横にある瀬戸内海の島で豊島という島があって、そこの集落の中に横尾忠則さんの美術館を作りました。もともと小学校の校長先生の家だったところが、大分住まなくなって40年なっていたんですけど、80年ぐらい前の建物ですね。手前に2棟あって、母屋があるというところで、それのリノベーションでした。手前は、実は開けてみたら、ほとんどあり合わせの材料で適当に作られた建物だったので、据え変えると言う事で、ほとんど新築です。奥の母屋は、既存の材料を活かしながら、腐っている柱なんかも多かったので、変えながらやっています。これは港町から歩いてくるとシンボリックにタワーが見えて来て、こういう外観になっています。で、この赤っていうのが結構強いテーマなんです。赤をなぜ使ったかというと、横尾さんって凄くカラフルな色を使う独特な色のイメージが強くて、その色を一回消したいなと思いました。それで受験下敷きの赤い板ってありますよね?赤を赤で消すみたいな。赤の波長は全ての色を一回消すので、それを使おうというのを急に思い立ちました。この美術館が日常の風景の中にある、非日常の美術館なので、日常と非日常の境界線であり、あと福武さんの方から、生と死というテーマをもらっていたので、生と死という一つの境界、それを体験的なフィルターでもあり、意味的にも境界として使おうという事で、赤いラインを一直線に引くことにしました。あと、もう一つ、こういったフィルターを使ったのは、横尾さんの作品のほとんどは二次元の絵画が多いんですね。3次元的な建築と2次元的な絵っていうものをちょっと近づけたいなって思っていて、ちょっとディメンションを下げるためにシーンとして切り取っていこうという事で、2Dに寄せた体験にしました。そうすることで作品と建築の親和性を上げるということで。最初のプレゼンテーションで色を消すっと言ったら、横尾さんに怒られるかなって思ったんですけど、なんか、良い!面白い!みたいになって。その時言われて凄くびっくりしたのは、「これは凄く絵画的に作られているから、良いと思った。」さっき言ったディメンションの話で、説明しなくても、そのことを瞬時に読み取った横尾さんに凄くびっくりして。でもその時から、多分お互いに信頼関係が来て、ほとんど何も言われずに、最後までできたんですけど。

芦澤:めちゃくちゃ言いそうな人ですけどね。

永山:そうなんですよね。

平沼:めっちゃ怖そうですよね。

永山:割とセンシティブな方なので、大変な時もあるんですけども。本質的な事は絶対に見逃さないし、説明的なものは嫌い。物を見せて分からない物は見せるな的な感じなので、今言った赤の効果も、説明する前に分かればOKなんだと思う。意味を説明するほど無駄なことはないという考えです。案としても意味っぽい物はすごい嫌いなんです。意味を持つものは嫌いだって言う。「意味の呪縛から外れろ」みたいな事をずっと言われながら、プレゼンに行く時に、これはどう説明したらいいんだろう?みたいな感じでしたけど。

芦澤:建築家からしたらなかなか面白い経験ですよね。

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