芦澤:あの、僕も沖縄でプロジェクトをやってたことがあるのですが、沖縄だと自然信仰がすごく強くありますよね。奄美もやはりそのような信仰的なものはありますか?

山下:あります、あります。奄美の歴史を少し調べると、独立してからすごく栄えた時期があるんですね。それは何かというと螺鈿といって、夜光貝を木の中に埋めるのですが、世界で一番良い夜光貝が取れたのは奄美なんですね。

芦澤:へぇ。

山下:そのため、江戸時代ほどまでは奄美は重宝され、沖縄侵略も薩摩が来たのもやはり初めは螺鈿、夜光貝なんです。一番北部で、一番大きくて良い輝きのものが採れたから、沖縄ではなくて奄美なんですね。そのような意味でその後に琉球になって薩摩になるのですが、琉球と奄美は、良い関係でした。空手の発祥は沖縄なので、武器を持って誰かをやっつけるというよりも誰かが来た時に自分の身を守れる様にという事のほうが基本なんです。基本的には友好的な人達で、その代わり自然が厳しいから、自然に対してそれこそ八百万の神様ではないですけど、いろいろな所に神がいて、いろいろな物を敬う。それが沖縄と同じ様に奄美も琉球のある支配下にあった時は相当根強くそこに根付いたでしょうね。

芦澤:だから、最近の沖縄を見ていますとそのような信仰心というのが、特に都市部ではどんどんなくなっていっていますが、奄美はどうなんでしょうか?

山下:奄美はまだ残っていると思います。ノロとかユタなどの言葉を聞いたことがありますか?ノロというのは神官、あるポジションの事をいうのですが、ユタというのが例えば、青森で行くと、あの恐山の口伝えする人をなんというんでしたっけ?シャーマンみたいな人のこと。

会場:イタコ…

山下:そうですね。イタコさん。イタコさんと同じ様に奄美はユタという人がいます。口伝えする人がいるんですよ。僕の田舎もいたのですが、最近の話で、3分くらいかかりますけどいいですか?たまたま僕の東京の友達、女性なのですが「私、奄美に呼ばれているから一緒に行ってよ」と言ってこられました。僕は何も神がかったものが分からないので「分かりました。」と言ってカミさんを一緒に連れて行きました。一番のユタ神様は90歳を超えておられるのですが、そのユタ神様のところに行って方言で喋られ、僕は側について、その友達は1時間くらい話をしてるんですよ。僕のカミさんも全然霊感の「れ」の字もないのに、1時間後その友達が終わると、「すみません、私も見てもらって良いですか?」って言って見てもらったら、いろいろ出てくるんですね。カミさんの祖先も知っているし、驚くような事まで出てきました。すごいと思いましたし、それが普通に残っている文化というのがすごいなと思ったんですね。沖縄はやっぱり少し薄れているんですよね。

そして僕は、地域素材をやるためにこのような活動を、個人だけではなくて団体を作ろうと思いました。僕だけではなく、できれば大学を含め、大きな企業を含めてやろうと思っています。日建設計や竹中工務店、先生たちも含めて行いたい。ありがたいことに鹿島出版会から本を出してもらいました。二つ話をすると一つは鹿児島のシラスを使って僕はこう建築を作りました。コンクリートの砂がなくなっているので、シラスという火砕流堆積物なのですが、これを砂の代わりにできないかを考えました。そしてこのようなメンバーですることで、ハードルが上がったのですが、大臣認定を取り、このように出来上がりました。ここまででも1年半2年かかるのですが、それを越えて1個できました。このコンクリート1個のブロックから建築を語るというよりも、この建築が次の時代の何かを作ってほしいと思っています。シラスってこれだけの量があるんですね。鹿児島県の表土の半分がシラスと言われていて、シラス台地というのはやはり価値がないから、このような30坪ぐらいの土地が、10万ぐらいで売買されるのですが、砂の代わりになると1m3あたり、150倍から180倍の価値が出てくるんですね。要は金が埋まってるような感じです。しかし、今はもう砂ってあまりないんですね。川砂が無くなって海砂は取ってはダメだと言っていて、今は石を砕いて砂を作っているのですが、いや、鹿児島にはあると。この仕組みでお金が出てきて、こうやって帰る人が出て鹿児島が復活する。そのようなことをするのが僕の仕事だと思っています。

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