安藤:芦澤さんは通っているわけでしょ?やっぱり通わないと。
私は週に2日間、通いました。やっぱり大学に通っていたら、面白いことばかり起こる。午前の講義が終わり、昼飯に行きましょうとなると、研究室の学生ら7、8人で行くのです。3度目くらいなると、「安藤さんが食事をおごってくれるらしい」と噂が広まる。4度目くらいなると、医学部や法学部など、他の学部まで、あちこちに広まり、安田講堂の下の学食に50人くらい集まりだす。(笑)

平沼・芦澤:あはは。(笑)

安藤:50人いても一緒。学食は安いですから、大したことはないのですが、それから頻繁に電話がかってくる。「安藤さん、今日はお食事行かないですか?」(笑)

この学生らの面白い所は、タダで食事をしたいと思っている訳ではなくて、ワイワイ食事をしたい。そういう日常の感動を味わいたいだけなんです。今の学校は、感動が薄いと私は思います。学校という場所を先生方も、もう一度、考え直してみてください。

芦澤:はい。

安藤:こういう日常で、東京大学に7年程、付き合いましたが、入る時大学に、「給料はいくらですか」と聞きました。そしたら、「まだ、給料の額は考えておりません」と返答がある。給料、決めないで頼むことに疑問をお聞きしたら、「いままで招聘して給料の額を聞いた人はいない」と返答がある。(笑)
だけど、平沼さんに設計を依頼するときに、設計料は当然必要でしょう。これは大阪人の良いとこで、ちゃんと自分の条件も言いますよね。

平沼:はい。お聞きします。

安藤:皆さんもぜひ、何をするにも「依頼料や給料、いくらですか」と、聞いてください。

そして、いちばん大切なのは、幾らで働いているのを知ることが大事です。安藤事務所にも古い人たちがたくさんいますから、「こんなに給料をもらっているんだから、もっと働いた方がいいと」日課のように言うようにしています。大阪の人は、給料の割に働いていないとダメだと言える。東京の人はそれを言わない。

芦澤:東京のクライアントに比べますと、大阪のクライアントは経済的には厳しい条件を言われますか。

安藤:大阪のクライアントは勇敢です。うちの事務所に電話かかってくる。知り合いを通じてなくても、電話を突然、直接かけてくる。「安藤さん家を建てたい」。「何坪くらいですか」と聞くわけですよね。「30坪くらい。」「予算はいくらですか」と聞くと「1,000万は用意できます。 「・・・。」(笑) 「30坪、1,000万じゃ建たんないやろ」と、言いますよね。そしたら、「それを建ててくれるのが設計事務所の仕事じゃないんですか」と勇敢に話しだす。 大阪の人はまず、いくらあるって、まずははっきりと言うからいいですね。一般的な相場があるから、まずお金がいくらあって、どうしていきたいのかということを相談して決めていきます。だけど時々、変わった人が出てきます。まぁ、信じられないお金持ちもいます。先日、建築の相談があって、こんなに大きな構想の依頼、いったい予算はいくらですか?と聞いたら、「2兆円くらい持っています」って言ってきます。(笑)

平沼:えっ(笑)大阪ですか。

安藤:いや、残念ですが海外です。予算の大きな仕事の依頼は、外国ばかりですね。「お金持っていますが」って言われてしまいます。

平沼:ははは。(笑) ひとつご相談をさせてください。先ほど、貴重なご講演を頂いたので、元・安藤事務所の芦澤さんが、いくつか質問をさせていただきたいと準備してきたのです。お聞きしてもよろしいですか。

安藤:どうぞどうぞ、もう何でも聞いてください。

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT